デンマーク、フランス 2013
監督、脚本 ニコラス・ウィンディング・レフン



タイでキックボクシングのジムを営みつつ、怪しげな商売にも手を染める男の奇矯な復讐劇を描いた作品。

まず注意しなきゃいかんのは、ライアン・ゴズリングが主演をつとめてるし、同じレフン監督作だから、と「ドライヴ」に近いものを期待しちゃいかん、という事。

全く別物です。

どっちかと言うと内省的で実験的。

そもそもこの作品、基本観客突き放してますし。

わかる人にだけわかればいい、っていう姿勢なんですね。

解釈の糸口を探してもらわなくても別にかまわない、という開き直りが前提にある、とでもいうか。

スムーズに話が流れないよう、意味不明なシーンをあえて盛り込んでるような傾向もあり。

いやね、作中でなにが起こってるのかはわかるんです。

物語の帰着も、とらえどころのなさを孕んではいるものの理解できなくはない。

ただ、観終わって、だからどうした、としか言いようのない感じなんですよね。

表層的な部分だけを追うなら、殺された兄貴の復讐にしぶしぶ手を染める弟の優柔不断さばかりが目について、なんのカタルシスも得られないことは間違いないです。

タイ人の変なカラオケシーンも笑っていいのか、何かを汲み取るべきなのかわけがわかりませんし。

はっきりいって眠い。

原色に近い赤や青、光と影を強調した画作りはサスペリアかよ、と思いつつも独特のセンスがあることを認めるにやぶさかではないんですが、それ以上のなにかがほんと見えてこない。

私には作品からのみうける印象で、この映画をどう解釈していいかわかりませんでしたね。

すべてが氷解したのは、視聴後、監督のインタビューをあちこち漁って読んだあと。

母親の存在がキーだったのかよ!と膝を打つんですが、いや、ちょっと待て、これを「毒親による子供に対する盲目的支配」をテーマとした物語だなんて誰が気づくんだよ、という話であって。

限りなく監督自身のための作品、というのが正解でしょうね。

レフン監督の生い立ちなんかを知るとより理解も深まるんでしょうが、だからといって、私達がその私的告白をどう受け止めるかはまた別であって。

それが本人にとって創作活動を続ける上でどうしても避けては通れなかったこと、いつかは形にせねばならなかったことであったにせよ。

ありかなしかで言えばありなんでしょう。

でもこういう作品を好んで見たい、とは私は思いません。

語弊があるかもしれませんが、私はプロの芸が見たい人なんです。

テクニックもやれる能力もあるのにわざと封印して自分の世界にこもる、って、迷走したベテランミュージシャンが陥りがちなトラップですが、それと似たものを感じましたね。

売れることがすべてとはいいませんが、あえて売れないことを自己満足気味にやるのもどうか、と思う次第。





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