アメリカ 2005
監督、脚本 ノア・バームバック



両親の離婚を発端に、崩壊していく4人家族の姿をシニカルに描いた作品。

自分本意で差別的な父親と、浮気相手との秘め事を平気で子供に話すようなタガのはずれた母親の間で翻弄される、16歳と12歳の男兄弟に焦点を当てて物語は進行。

共同親権の名の下に、父と母の家で交互に過ごす2人が徐々におかしくなっていく様子を、どこかユーモラスな質感をもまじえて克明に描いてます。

ややネタバラシになってしまうかもしれませんが、この作品が特異なのは、はなから「救い」なんてサラサラ用意する気はねえ、と監督が開き直ってる点でしょうね。

ぶっ壊れた両親はぶっ壊れたまま。

そもそも自分たちが子供を養育する上で親らしくない、ということに父母とも全く気づいていない。

それを外部から正してくれる存在もいない。

いうなれば、ある種のダメ親のアイコンなんですね。

けれど兄弟は未成年であるがゆえにその管理下から逃れるすべがない。

自分を偽り続ける兄と、奇行に走る弟。

監督が切り取ってみせたのは兄弟を取り巻く「袋小路」の断面。

それだけがまさにこの映画の全て。

なので81分という短さながら、終わってみれば「はあ?だからなに?」と思った人も多かったのでは、と思ったりもします。

どこへも行かないし、なんら落とし所があるわけでもない。

じゃあ結局なにを見るべきなのか、という話なんですが、微細なとっかかりながら、兄は心の底で本当は何を求めていたのか、を見定めることに他ならないように私は思うんですね。

象徴的だったのは彼の歌うピンクフロイドの「Hey you」。

この曲を作詞作曲したロジャー・ウォーターズは誰にむけてこの詩を書いたのか、そしてなぜ兄は盗作と知りながらも学園祭でこの曲を歌ったのか、全てはこの1点に集約されているように思います。

そこに考えが及べば、もう巻き戻すことは出来ないのだ、と暗示するラストシーンがきっと印象的に映ることでしょう。

ミニシアター系、と言ってしまえばそれまでかも知れませんが、ともすれば重苦しくなりがちなこの手の題材をどこか軽快に、それでいてきめ細やかに描写した監督の手腕を私は評価したいですね。

カタルシスは得にくいかもしれませんが、どこか記憶に残る作品でしたね。





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