日本 2015
監督 佐藤信介
原作 花沢健吾



国産のゾンビ映画としちゃあ、屈指の出来だったんじゃないか、と思います。

とはいえ邦画ゾンビの系譜に詳しいわけじゃないんですけどね。

なんかいくつかマイナーな作品があったように記憶してるんですが、タイトルすら思い出せない、ってことはきっと大した出来じゃなかったんじゃないか、と勝手に推測。

少なくともここまでマニア以外の観客を動員した作品はなかったのではないか、と。

やっぱりうまかったのは、21巻(2017年現在)にも及ぶ原作からなにを切り捨てて、何を拾い上げるか、取捨選択のさじ加減でしょうね。

原作だと完全なヒーローだとは言い切れない主人公英雄の屈折ぶりが読みどころのひとつだったりするわけですが、本作の場合、ややこしい内面を描くのは脇に置いておいて、現実世界でのダメ男が弱肉強食のサバイバル世界で弱い自分の殻を破り、戦いの矢面に立つまでのプロセスを描くことだけに焦点を絞った。

いや、それだとあの世界観と微妙に物語の趣旨が違ってくる、という熱心な原作ファンもおられることとは思いますが、私は基本、映画は映画で別物、という考え方なので、これはこれで正しい、と思う。

原作に振り回されて中途半端な出来になるよりはよっぽどいい。

なにより単純にカタルシスがありますよね。

ロッカーに一人隠れて怯える主人公が、意を決して偶然知り合っただけの女を助けるためにショットガンを手にとるまでの流れは、問答無用で応援したくなるかっこよさがありました。

ショットガン96発をうち尽くすまでゾンビを狩り続けるクライマックスのシーンも、手に汗握るスリルと緊張感で邦画とは思えない凄みがあった。

序盤の現実が瓦解していくくだりもテンポが早いのに駆け足な感じがしないのが素晴らしい、と思いましたし。

監督は観客を別世界へひき込むすべを心得てる。

ただまあ、総ずるなら荒削り、といえば荒削りではあるんですけどね。

特に、有村架純演じるひろみちゃんは存在そのものがエンディングへの伏線でしかないのに、何の回収もされないまま終わってしまいましたし。

2ありきならありきでいいから、実現するしないは別にして、何らかの形で彼女のストーリーは終わってない、と匂わせておいてくれないと、このままじゃあただのデク人形。

不完全な感染である意味がない。

あと、アウトレットモールに篭城する展開がね、やっぱり私のような古いファンからするとどうしてもあの名作「ゾンビ」を想起させてしまうわけです。

そこは映画と言うメディアで勝負するなら別の形で違う器を用意して欲しかった。

作品のテーマだけを鑑みるなら、アウトレットモールにこだわらなくても似た状況を演出することは出来たと思うんですよね。

作り手の志の問題なのかもしれませんけど。

えー屈指の出来、と言ってる割にはいささか辛口すぎることを挙げ連ねてしまったかもしれませんが、それも、思った以上に出来がよかったからこそ。

いささかゾンビの特殊メイクがはりきりすぎで、グロテスクな描写も辞さない部分が好みを分けるかもしれませんが、それを踏まえても広い層にアピールできる良作だと思います。

ちなみ個人的にはゾンビが今風にどいつもこいつも走りださないのも評価したいですね。

ゾンビはスローモー。

こりゃもう誰がなんといおうと不文律。

そこを走るやつも居れば走らないやつも居る、と描き分けてくれただけでも私はニンマリ。

海外でも評価された、というのが納得の一作ですね。





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