アメリカ 1998
監督 アレックス・プロヤス
脚本 アレックス・プロヤス、レム・ドブス、デヴィッド・S・ゴイヤー



ふと目覚めると、自分の過去が一切思い出せない。

自分が何者であるのかすらわからない。

見覚えのない部屋を探るように歩くと、ベッドの傍らに女の死体が。

死体には謎の渦巻状のペインティング。

その時、電話がけたたましく鳴る。

「逃げろ、もうすぐ奴らがやってくる」

部屋を飛び出すとエレベーターに黒装束の男たちが数人。

あわてふためき、わけのわからぬまま夜の街、ダークシティへと駆け出す主人公。

その先に待ち受けるものは?・・・・って、えー、ここまでの展開で、早々に私はノックアウトでございました。

これで続きが気にならない、と言う人が居たらほんとお目にかかりたい。

SFサスペンスの導入部としてもう完璧、と思いましたね。

体裁としては一応侵略SFで、誰にも気づかれぬまま町に住む人間すべての記憶を操作する異星人の存在が前置きとしてあって、なにかの偶然からその支配を免れた主人公が事の真相を暴こうとする、と言うのが物語の主筋なんですが、まーとにかく思わせぶりに謎めく場面、展開を演出するのがやたらうまい。

12時になると一斉に意識を失う住人達、それと同時に、あたかも宗教的な儀式でもあるかのように巨大な時計に向かって念を凝らす大勢の異星人集団、狂言回しなのか、はたまた核心を握る人物なのか、ちょくちょく主人公にちょっかいを出してくる正体不明の医師、そしてどうしても辿り着くことができない主人公の故郷シェルビーチ、なにがどうなってるのか、いったいどう物語は転ぶのか、予断を許さぬとはまさにこのこと。

とにかく先が読めないんですよね。

脇を固める登場人物達がまた実に魅力的で。

まさかあの刑事がこんな役割を担うなんて、と私は終盤不覚にも熱くなってしまったり。

期待を裏切らぬクライマックスの、予想外のオチも見事の一言。

ようやくたどり着いたシェルビーチにはいったいなにがあったのか、あっ!と言わされることは間違いなし。

これもう、さっきまで認識してた現実が瓦解するレベルで仰天もの。

そこからエンディングまでの流れがこれまた怒涛で。

あそこからこんな目の覚めるようなシーンをラストに用意してくるのか、と、その美しさに鳥肌。

いや、ま、そりゃね、ネタだけに着目するならこりゃハイラインの「宇宙の孤児」ですよ。

そこは否定しきれない。

重箱の隅をつつくなら、矛盾こそ見当たらないものの整合性に欠ける部分はあるし、何故主人公はそんな風に力を得ることができたのか、一切なんの説明もないのがどこか少年漫画のようですし。

でも私はこの作品の想像力の豊かさと、落差のあるシナリオ、それらを包括するSFマインドの味わい深さを評価したいですね。

低予算なのにもかかわらず、今見てもあまり古びて見えぬ町の風景やVFXもいい。

まあこれは夜の街、と言う設定で、常に映像が薄暗いせいかもしれませんけど。

SF好きには是非見てもらいたい一作ですね。

余談ですが、後のジャック・バウアーが変なキャラの博士を熱演してて、これがなかなかはまってます。

やるな、キーファー・サザーランド。





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