ソビエト連邦 1986
監督 ゲオルギー・ダネリア
脚本 ゲオルギー・ダネリア、レヴァス・ガブリアゼ



偶然、空間転移装置に触れてしまったことにより、キン・ザ・ザ星雲惑星ブリュクに飛ばされてしまったソビエト人2人の、地球への帰還を目指す旅を描いたSFコメディ。

とりあえず、旧ソビエトにSFコメディが存在した、って事実だけで私は驚きでしたね。

決してソビエト映画に詳しいわけではないですが、あちらじゃあやっぱりタルコフスキーに代表されるような、重厚かつ深遠なテーマの人間ドラマが主流なんだろうな、と勝手に思い込んでいたものですから。

少なくとも笑いに関して貪欲な国じゃないと思いますし。

まさかここまでタガのはずれたバカ映画がこっそり撮られていたとは・・・。

しかもね、ちゃんと笑えるんですよ、これがまた。

欧米諸国の作品と比較しても笑いのセンスに遜色は感じられない。

むしろ質的には日本のお笑いに近いかも、と思えたりもする。

まあ、ルーズで脱力系ではあるんですけどね、なんか私はかの国の国民性を誤解してたんじゃないかと、考え込みすらしましたね。

そりゃ、ちょっと大げさか、すまん。

で、本作、コメディであるのと同時に、非常にシュールな印象をも受ける作品なんですが、これ、シュールに思えるのは異星の環境や社会性、文化を地球の常識的尺度にとらわれずゼロからきちんと構築してるからだと私は思うんですね。

そこは本当に綿密に作ってあります。

もちろんあえて奇妙さ、ばかばかしさを狙ってる部分はあります。

でもそれを支える土台に、図面を基にした堅牢さが伺えるんですよね。

だから余計な遊び、バカ騒ぎをその上でやらかしても全体がゆるがない。

そこはSFとして決してあなどれない水準の高さだと思うんですね。

造語が飛び交いまくるんで理解しにくさはあるんですが、それも見すすめていくことで解決。

唸らされるのは特に説明があるわけでもないのに、惑星ブリュクにおける社会のヒエラルキーがどうなっていて、なにがこの閉塞感を招いているのか、だんだんわかってくる仕組みになってること。

これを旧ソビエト社会のカリカチュアだという人も居るみたいですが、まあ、そこまで露骨なものでもないかな、と。

むしろそれを逆手にとって悪ノリしてるような感触もありますしね。

また、 決して潤沢な制作費があったわけでもなかろうに、異星の風景をもっともらしくみせる工夫も達者。

どう見ても釣鐘にしか見えない宇宙船といい、船内のアナログな造形といい、地下世界の珍妙さといい、どうなってるんだ?と観客の興味をひく権謀術数に長けている、というか。

チープと言う人も居るかもしれませんが、私は安直にコンピューターやら電子パネルを並べるよりずっとセンスがいい、と思った。

ま、オチのわかりにくさに代表されるカルト臭は拭えないとは思うんですが、なんかね、妙に愛嬌ある映画でしたね。

熱心なファンが居るのも納得。

テリー・ギリアムが酔っぱらってメガホンとったみたいなアバウトさ、瞬発力がこの作品を唯一無二のものにしてるような気もします。

私はかなり好きですね。

なにはともあれ、主人公がバイオリンを弾いて歌う「ママ、ママどうしよう~♪」は必聴。





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