アメリカ 2015
監督 ターセム・シン
脚本 アレックス&ダビ・パストール



癌におかされ余命いくばくもない富豪老人が、非合法な先端技術で別の肉体に意識を転移させ、第二の人生を歩もうとするが、そうは問屋がおろさない、すべてがうまく行くわけがないでしょうが!ってな按配のSFサスペンス。

さて、私は基本SFにうるさい男ですんで、いわゆるデータ化されたメモリーの集合体を転送することで生まれ変わりは可能、みたいな安直な設定は我慢ならないわけです。

近い例で言うなら「チャッピー」とかね。

人格が電気信号化できるならこの世はとうに不老不死が実現してるわ、って話であって。

細かいことにこだわるようですけどね、そこを上手にクリアしてくれてないと物語そのものに入り込めないぞ、という懸念がまずあって。

安っぽい少年漫画みたいなのは絶対ダメだから!大丈夫か!と。

もっともらしそうにみえてひたすら胡散臭いのだけは勘弁、と結構はらはらしながら見てたんですが、意外にも「あえて説明しない」ことでそこは華麗にブレイクスルー。

あ、なるほど、こういう手があったか、と。

これはこれでありかも、と変に納得。

そこからの流れは細かいカットやフラッシュバックを巧みに挿入する、なかなか緊張感あるものだったと思います。

「意識の転送」という荒唐無稽を上手にさばいてくれさえすれば、不老不死がもし実現できたなら、という人類最後の夢へのあくなき興味を見る側も安心してふくらませることができるわけで。

そりゃやっぱりあれこれ好奇心が刺激されるし、先の展開も気になってくる。

ましてや、どうやら弊害があるようだ、と匂わせたりもするもんだから、もう頭の中はこれいったいどう転ぶんだ、と色んな想像がぐるぐる渦巻きっぱなしな状態でしたね。

ほんと、中盤ぐらいまでは近年になく集中して見ました。

謎の散りばめ方がまたうまいんですよ、これ。

このままのテンションを最後まで維持してくれてたらおそらく私はかなり高い評価をしてたはず。

ところがです。

よろしくないのが実は終盤でして。

結論から先に書きますとね、伏線の回収の仕方もオチも決して悪くはないんです。

不甲斐なかったのは一にも二にも、その見せ方。

これ、編集でしくじってるのか、監督の集中力が途切れちゃったのか、どっちかわからないんですが、肝心の種明かしの場面ぐらいから急にあれこれ雑になってくるんですよね。

ネタバレになってしまうので詳しくは書けないんですが、必要ないと思えるシーンがちょくちょくある割には、もっとじっくり描写しないとダメだろう、と思われるシーンが妙にはしょり気味だったり。

なんでそこをそんなに淡々と撮っちゃうんだ、と思ったり。

役者にどう演技させるか監督が迷ってる、と感じられるシーンがあったり。

もっともっとドラマチックになったはずなんですよ、このシナリオなら。

結局、そう言った不手際のせいで、すべてが「とりあえず、あらすじを追ってみました」みたいな表情のない演出になってしまってるんですよね。

おかげで一番肝心な主人公の老人の気持ちの変化、心の機微みたいなものが全然伝わってこず、そのパーソナリティすらあやふやに感じられる有様。

前半のスリルはいったいなんだったんだ、という。

うーん、ターセム・シン監督好きなんですけどね、なんで後半、こんなに荒れちゃってるのかほんとよくわからないですね。

衰えた、と言いたくはないが、せっかくのシナリオを御破算にしてるのは間違いなく監督ですね。

残念。

なんともはがゆい1作でしたね。





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