イタリア 2014
監督 サヴェリオ・コスタンツォ
原作 マルコ・フランツォーゾ



サスペンスなのかな?と思って見てたらどんどんスリラーみたいになってきて、見終わってみれば結局家族ドラマだったのか、それとも?・・・ってな作品。

まず私が感心させられたのはオープニングでのシチュエーション作りのうまさ。

物語の主役である夫婦が結婚前に偶然出会うシーンから始まるんですが、なんとそれが中華料理店のトイレなんですよね。

後から入ってきた奥さんとともに立て付けの悪いドアに阻まれ、2人して共用スペースに閉じ込められてしまうんです。

呼べど叫べど助けは来ない。

なんとかしなきゃなんないんだけど、実は旦那、腹具合が悪い。

「すまない」と言って1人個室に駆け込む旦那。

「ちょっと、臭いわ」と鼻をつまんで閉口する奥さん。

平身低頭謝りながら、なんとか脱出の方法をあたふたと思案する旦那。

次の瞬間、ふいに二人から笑いが漏れる。

なんだよこれ、どこの出来すぎたラブロマンスなんだよ、と、そのおかしさと不作為な偶発性の同居した作劇に舌を巻く。

まずここまでで見る側は完全に油断させられちゃうんですよね。

素敵な夫婦が結びつきの強さで色々苦難を乗り越えていったりするのかな、なんて。

その後の展開を考えるなら、見事な目くらましだった、という他ない。

この数分のシークエンスが中盤ぐらいまでの奇妙な違和感、気味悪さを恐ろしく助長してるんですよね。

もうね、何が起こってるんだこれ?ってなレベルでストーリーはどんどん怖い方向に進んでいきます。

焦点が当てられているのは、なんのきっかけも兆候も見出せなかったのに、いつのまにやら大きく育まれていた狂気。

別に幽霊もクリーチャーも出てこないんですけどね、このなすすべのなさには「ローズマリーの赤ちゃん」とか、あの手のホラーをふいに思い出したりもしましたね。

主として描かれているのは自分の子供を頑なに自分のやり方で育てようとする母親と、その非常識な養育方法を容認できない夫との愛憎劇なんですが、なんか盛り付け方が独特、ってのは確実にあった。

また監督、カットの切り替わりでやたら場面を暗転させるんです。

これがなんだか妙に想像力を刺激して意味なくドキドキさせられることこの上ない。

もう、嫌な展開しか思いつかない、というか。

それを全部煮え切らない不気味さでかわしていくのがまた心憎かったりもするんですが。

エンディングは意外な切り口でそれなりにショッキングです。

私はゾッとさせられた分、もう少し違う形の結末を想像してたんですが、まあ、これはこれで流れに沿った帰結だったかな、と。

ただね、こう言う形で物語を締めくくったことでなんとなくテーマがブレてしまったような印象は残りますね。

結局、福祉、制度のいたらなさを糾弾したいのか、それともただ思想的に囚われてしまうことの怖さを描きたかったのか、ストーリーに直接かかわりのない断片的なシーンの数々から思いを巡らせるなら、もっと別の落とし所があったのではないか、という気もします。

双方に正義はあったのかもしれない、と含ませるようなラストシーンの方がより訴えかけるものは鮮明になったんじゃないか、と。

そういった意味での尻の座りの悪さはありますね。

あえて多くを説明しない、あえて肝心なシーンを映さない監督の手法は好みではあるんですが。

あと、本作でヴェネチア国際映画祭女優賞を受賞したアルバ・ロルヴァケルの演技、これはちょっとすごかったですね。

演出によるところも大きいんでしょうが、感情を高ぶらせない抑えた役作りは妻であるミナの得体の知れなさを強烈にアピールしてたように思います。

この作品、見終わって後味の悪さが残るんで気軽にオススメできない、ってのはあるんですが、アルバ・ロルヴァケル目当てで見る、ってのはありかもしれません。





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