フランス 2015
監督 ステファヌ・ブリゼ
脚本 ステファヌ・ブリゼ、オリヴィエ・ゴルス



50歳を超えてリストラにあい、再就職もままならぬまま非情な西洋型社会に翻弄される男の姿を描いた人間ドラマ。

いやもうほんと見てて、余所の国の知らない人のお話じゃないなこれ、とつくづく身につまされましたね。

主人公であるティエリーが失職後、その身にふりかかってきた出来事はすべてそのまま現代日本で暮らす中高年にも重なることだらけなように思います。

いわく、職安でクレーン操縦士の研修を受けることをすすめられるが実際の求人では未経験者は必要とされていない。

ローン会社は失職を知って自宅を売却することを執拗に勧めてくる。

求人に応募した会社は面接の手間を惜しんでウェブカメラでの応対で済ませようとする。

描かれてるのは中年以上の働き手を必要としない歪んだ社会の構図。

私は浅学なんで詳しくは知らないんですが、いわゆる先進諸国と呼ばれる国々が共通で抱える問題なんでしょうね、これって。

あまりに似通った格差社会ぶりに胸糞悪くなることしきり。

物語中盤、焦る主人公はなんとか面接を上手に乗り切ろうと支援組織で模擬面接に挑むんですが、そこですらホームグループに参加している若者から「目が泳いでる」とか「言葉尻が聞こえにくい」とか「覇気が感じられない」とか、あれこれ居丈高に指導されてしまう始末。

50歳を超えてこんな屈辱を味あわないと普通に仕事を得ることもできないのか、と思うとなんかもう泣けてきますね。

結局資本主義社会ってのは年長者に対する敬いすら足蹴にしてしまうものなのか、とひどくうんざりしたり。

なんとかようやく得た仕事も自分がやりたいこと、職歴をいかせるようなものではないスーパーの万引き監視員。

これがまた同僚ですら疑ってかからねばならない神経をすり減らすもの。

監督は、新聞なら2行で済んでしまうような出来事の裏側を映画にしたかった、と語ってますが、その思惑は見事形になっているように思います。

多分こういう風景って、もう世界中で今現在も多くの人が目の当たりにしてる現実なんでしょう。

そりゃね、なにも珍しいことじゃない、と言えばそれまでですし、映画の題材として刺激的なわけでもないですよ。

けれど、実際に映像でみるからこそその痛みが肌感覚で伝わってくる、ってこともあるわけで。

エンディングが若干わかりずらい、落とし所が不在な印象もありますが、この作品にひどく共感してしまう人はきっと一定数存在することと思います。

それは多分、今後どんどん増えてくる。

主演をつとめたヴァンサン・ランドンの悲哀に満ちた演技も見事。

友よ、さらばと言おう」と同一人物とはとても思えないですね。

特に山場も見せ場もない小品、と切り捨ててしまう人もきっと居るんでしょうが、現代社会の歪みを鮮やかに描き出した力作としてないがしろにできない一品だと私は思います。





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