アメリカ 2016
監督 カスラ・ファラハニ
脚本 マーク・ビアンクリ、ジェフ・リチャード



隣に住む偏屈なじじいをからかってやろうと、じいさんの自宅に心霊現象を疑わせる仕掛けを無断で設置し、それを隠しカメラで観察して興にのる学生二人組の、ささいないたずらが招く思わぬ顛末を描いた作品。

ホラー、もしくはスリラーみたいな区分で扱われてますが、これ、私の感触では一風変わったミステリであるように思えます。

とりあえず怖いとか、狂気とかとは無縁ですね。

むしろ主眼が置かれているのは、じいさんは本当にやっかいな隣人なのか、そして学生達のいたずらが真に意味したこととは?と言う点。

このあたり、観客をミスリードする先入観の植え付け方はほんとにうまかった、と思います。

だってね、じいさん、通りかかった近隣の住人に「今度うちの敷地内に犬を入れたら犬ぶっ殺すぞ」とか平気で言い放つ人間なんですよ。

書類らしきものわざわざ届けにきてくれた女性に居留守を使った上、中味も見ずに封筒破り捨てたりとか。

せわしなく閉開する網戸にキレて手斧でぶっ壊したりもしやがりますし。

ああ、こりゃ相当屈折してるわ、まあちょっとやりすぎかもしれないけれど、さして深刻でないいたずら仕掛けられても仕方のないジジイかもな・・・と見ててね、つい学生に同調してしまいそうになるんですよね。

で、監督がもっとも訴えたかったことは、その手の内面を量ろうとしない安易な思い込みが取り返しのつかない結末を招くこともある、だったと思うんです。

ちょっと穿った見方かもしれませんが、これってネット社会における炎上の構図と全く同じだと思うんですよね。

当事者と直接話したこともなければ付き合いもないのに、一側面にすぎない情報でその人そのものを一方的に叩く。

最後まで見て、観客は気づかされるわけです。

私達は知らぬ間に「炎上に加担する側」にまわってやしなかったか?と。

もちろんそれがこの作品の全てでは決してないんですが、そんな問いかけをごく自然に悟らせる物語の構造に私はひどく感心させられましたね。

また本作、デティールに対するこだわり、つっこむ隙を与えない配慮がやたら鉄壁なんです。

何をどうすればこのようないたずらが可能なのか、監視システムはどうなっているのか、なぜ安易な侵入が可能だったのか、全部きっちりその背景を固めて撮影に望んでる。

地下室に謎がある、と思わせるストーリーの旗振りも実に見事。

推理する快楽を併せ持つばかりか、そこに疑問を挟む余地すらあたえない、ときた。

しかもそれら全てを事件と同時進行で、事後の裁判シーンが牽引していく、という周到さがこれまた心憎い。

断言しますが、熟達のベテランを思わせるテクニックがあると思います、この監督。

はっきりいって結末は悲劇的です。

もうやるせないの一言につきる。

けれど、だからこそ深く印象に残る、って事もあるわけで。

欲を言うなら結末すら統括してしまうラストシーンが欲しかったところですが、まあ、それはさすがにハードル上げすぎですかね。

国内未公開ながら必見の秀作だと思いますね。

とりあえず、もしあなたがこの作品をドント・ブリーズの便乗商品だとか思ってたらそれは大きな間違いだから、今すぐレンタル店へGO。 

Amazonビデオでもいいけど。

予期せぬ拾い物な一作になることは保証します。





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