アメリカ 2015
監督、脚本 ジョエル・エドガートン



偶然地元の町で再会した高校時代の同級生から、なぜか次々と贈り物が届くことに戸惑う夫婦を描いたスリラー。

いや、これ単純に驚かされましたね、あまりによく出来てて。

ジョエル・エドガートンという俳優に決して詳しいわけではないですが、とても初監督作品とは思えぬ質の高さ。

しかも脚本まで手がけるという多才ぶり。

はっきりいって彼以下の専業監督なんて業界にはゴロゴロいると思います。

かほどにこの作品の完成度は高い。

まず、なんといっても構成力が確かなことに私は感心。

非常に丁寧に物語を紡ぐことに腐心しているがゆえなんでしょうが、それでもこの矛盾のなさ齟齬のなさ、欠落、すっ飛ばし皆無な出来栄えは見事という他ないですね。

しかもちゃんと後からあの部分が伏線だったのか、とわかるような仕掛けさえある。

もちろん前フリを放置する、なんて不手際もやらかさない。

さらに私が最も唸らされたのは、スリラーの体を装いながら安易な脅かしや恐怖演出でお茶を濁してないこと。

ギフトの送り主であるゴートが突然豹変して暴れだすとか、室内のドアの影に潜んでるとか、その手のね、ありきたりな虚仮威しを一切やらないんですよ。

ただ淡々とごく普通な善意の人のようにゴートは振る舞うんですね。

それは最後の最後まで突き崩されることはない。

なのにやたら怖い。

ほんの小さな違和感をものすごく時間をかけて、実にじっくりと大きな不安感に成長させてるんです、監督は。

ゴートに関する情報を少しづつ小出しにしていく手管もなんとも上手い。

例えば元軍隊にいたとか、過去逮捕されてるとかね、なにも起こってないのに観客側の想像力ばかりがやたら膨らんでいく筋立てになってるんですよね。

特に夫婦の自宅のガラスが割られるシーンなんて、ここまで盛り上げてきて、あえてそっちの方向へ話を持っていくのか、と私はほとほと舌を巻いた。

「じらしてかわす」ことの繰り返しで不穏さを醸造していく手法は、もうほんとベテランはだし。

エンディングも鮮やかの一語に尽きる。

すべての付箋が取りこぼしなく因果応報の罠を具体化。

いやこりゃ傑作でしょう。

はたしてゴートのギフトとはなんだったのか、そもそもは本当に善意だったのか、それとも全ては計画に基づくものだったのか、見終わった後に振り返ってみるのも一興かと。

最後に少しだけ意地悪なことを書くなら、この作品のプロットって、別にそれほど物珍しいものじゃないとは思うんですね、私は。

似たようなアプローチのスリラーは他にもありますし。

けれど、そんな既視感すら逆手にとって没個性を説得力で染め上げたエドガートンの才覚こそがこの作品の一番評価されるべき点でしょう。

後味の悪さに好みは別れるかもしれませんが、非凡な一作だと私は思いますね。





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