スペイン 2015
監督 アルベルト・ロドリゲス
原作 マヌエル・セルダン


1990年代、実際にスペインで起こった巨額詐欺事件を映画化した作品。

前半、ちょっとわかりにくいです。

時系列が前後する構成のせいもありますが、やはりお国柄もあってか、制度、法律が日本とは微妙に違ってて、なにがどうなってるのかよくわからない部分もちらほら。

まあ、私が不勉強で無知なだけかもしれませんが。

まずですね、主要な登場人物として治安警備局長、ってのが居るんです。

この男、次の大臣は彼に違いない、と言われながら、民心を欺いて15億ペセタもの公金をこっそり横領してやがるんですね。

ある日、それが世間にバレた。

あわてた局長は国外逃亡を謀るために元諜報組織のエージェント、パエサに手助けを依頼する。

捕まりたくないし、金も返したくないんだ、というわけですな。

うん、ひどいやつです。

パエサはパエサで国に恨みがあるもんだから局長の手助けを快諾する。

物語の本筋は、パエサの手引でスペインから姿を消した局長の逃亡の日々を描くことに重点が置かれてるんですが、これねえ、どう書くべきなのか迷うんですが、良く言うなら緻密で丁寧な作り、悪く言うなら派手さ皆無で共感しにくい他所の国の出来事なんですよね。

逃亡の日々を過ごすうちにあれほど強気だった局長が、だんだん倦み疲れてきて「私はただ妻と過ごせればそれでいいんだ」と弱音を吐き出す展開なんかはなかなかの見せ場だったと思うんですが、基本それ以外のドラマは存在してません。

どう局長を逃がすか、それをコンゲーム的な駆け引きで描写するスタンスなんですね。

このタイプの作品って、やっぱり色々難しい、と思うんですよ、私は。

例えばね、これが日本では有名な三億円事件を題材にした作品だとする。

三億円事件、どういう経緯で何が起こったのか、いちいち説明されなくてもみんな知ってます。

その裏側を暴く、となると、府中刑務所前で現金輸送車が白バイに停められて、なんて説明は今更野暮以外の何者でもないですよね。

多分人を掘りさげて描かなくとも、その知られざる当事者たちのやりとりだけできっと充分楽しめることでしょう。

つまりですね、この作品を鑑賞するにあたって、前知識みたいなものが決定的に欠落してるんです、私には。

えーあの有名なロルダン事件だよ?知らないの?とスペイン人なら言うでしょう。

いやいやじゃあお前らはヒ素入り毒カレー事件知ってるのかよ、って話であって。

知ってるでしょ?前提で、事細かにデティールを積み上げられてもですね、伝わってくるものって、へえ、そうだったんだ、程度の感慨でしかないですよね。

他国にも広くアピールするつもりだったのなら、なぜパエサは国に恨みを持ったのかを回想するシーンは必須でしょうし、局長が公金を横領するにいたった経緯、なぜ妻に執着するのか、そこを掘りさげた人物描写は最低限必要だったでしょう。

見た限りでは、やはりあの「有名な事件」ありき、の構造なんですよね。

一応最後にあっと言わせるどんでん返しが待ち受けてはいるんですが、私にとっては終始他所の出来事のままでどうにも感情を揺さぶられないままでしたね。

結論、ヨーロッパの観客向き。

すごくしっかり作ってあると思いますし、男優賞を受賞したパエサ演ずるエドゥアルド・フェルナンデスの演技も素晴らしいと思うんですが、すいません、楽しめません。

ちゃんと事件のことを調べてから見ればまた違ったのかもしれませんけどね。





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