メキシコ 2015
監督、脚本 イサーク・エスバン



バスの待合所に足止めを食らった男女8人を襲う、不可解な現象を描いた密室ホラー。

記録的な豪雨のせいで見知らぬ者同士がそれぞれの事情をかかえて同じ屋根の下に集う、というシチュエーションは悪くなかった、と思います。

いかにも何か起こりそうで、期待を煽るものがあるというか。

どこかミステリっぽくもありますよね。

多分グラインドハウス的な雰囲気作りを狙ったんだと思うんですが、あえてモノクロで古びた映画風に仕上げた工夫もニヤリとさせられるものがある。

「この豪雨はただの豪雨じゃない、ここから出ることはかえって危険を伴う!」とした謎めく超常的展開もいい。

どこに転ぶのか、予測のつかないものがあったことは確か。

ま、問題は、そこからどういうプロセスを経てオチへとストーリーを導くのか、でしょうね。

これがねー、もうほんとにね、本作の場合、なんだこれ、とあっけにとられるというか拍子抜けというか。

そりゃね、恐怖をかきたてるのに色んな方法があっていい、とは思うんですけど、何故監督はよりにもよって登場人物がみんな同じ顔になってしまう、などという珍妙なアイディアを作品に持ち込んだのか、ほんと不思議でなりませんでしたね、私は。

老若男女問わず、時間が経つにつれ全員髭ヅラのオッサンになってしまう怪奇、っていったいなんのギャグなんだよ、って話であって。

しかもその影響が及ぶ範囲は人物のみならず、ポスターやピンナップ、免許証の写真等、無機物にまで至る始末。

髭ヅラのマリリン・モンローが壁に貼られてたりするんですよ。

どう考えても笑わせたかった、としか思えません。

昔、ドリフターズのコントで全員が長さんのかぶりものをして「ダメだこりゃ」を連呼する、ってのがありましたが、もー、絵的には全く同じでね、なんでホラー見てて長さんを偲ばなきゃならねえんだよ、って話であって。

だってね、髭ヅラのオッサンの顔をしたお姉さんに「彼のせいじゃないわ、撃たないで!」などと悲痛なセリフを吐かれてもですね、そりゃ失笑しか漏れてこないわけですよ。

「その顔で言うな!」って、はよ誰かつっこまんかい、ってなもんで。

でも大真面目に撮ってるんですよね監督は。

笑わせようなんて気配は微塵もない。

はっきり言って狂ってます。

もはやこりゃ前衛ホラーと評してもいいんじゃないか、とすら私は思った。

一応、なぜそういう現象がおきたのか、きちんとしたオチは用意されてるんですが、髭ヅラ無限増殖という発想を良しとした時点でもうまともな批評はできないですね、私の場合。

誰か監督の暴走を止めてやれよ、って、ほんとそれだけ。

しかしパラドクスからここに来るか、って感じですね、イサーク・エスバン。

このまま自由奔放にやらせておけば、いつの日か誰もお目にかかったことがないような亜空間な作品をものにする日も来るかもしれません。

私はとてもついていけそうにありませんが。

怪作の一言。

変わった映画を見たい、って人向き。





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