アメリカ 2011
監督、脚本 ジェフ・ニコルズ



繰り返し見る悪夢に強迫観念を抱き、なにがなんでも地下シェルターを作らなければならないと思い込む男とその家族を描いた作品。

圧倒的にうまかったのは、はたして男が狂っているのか、それとも彼はなにかを予知しているのか、最後の最後まで観客に悟らせないドラマ作りでしょうね。

いや、そこはむしろ男の奇行にどう対処していくべきなのか、戸惑う周囲と家族の物語、と言い切ったほうが適切かもしれません。

少なくとも語り口はスリラーやSFの文脈じゃない、と私は感じた。

とにかく人物描写が丁寧。

それでいてその関係性をじっくり描く手腕も確か。

いちいちデティールをしっかり拾っていくんですよね。

地下シェルターを作るためには金銭的にどのような負担があって、そのためには家計をどうやりくりすべきで、掘削のための重機はどう手配するべきか等、水も漏らさぬ周到ぶりでひとつひとつ具体化していくんです。

で、それが終盤、男と家族のあり方すら問う内容につながっていく。

なんだこれ一級品の家族ドラマじゃねかよ、と私は舌を巻いた。

また外堀を固めるのが実に達者なんです。

主人公の母は統合失調症で入院してるとか、精神科を受診するも地方ゆえ確かな診断を得られないとか。

男を取り巻く社会環境にすら言及する手法は、もう別にこれオチがなくても充分成立するんじゃ、と思えるほど静かにドラマチックだったりする。

マイケル・シャノンの朴訥だが熱い演技も素晴らしいです。

主人公の苦悩がこぼれ落ちるようにその立ち居振る舞いから伝わってくる。

クライマックス、シェルターのドアを開けるシーンなんてもうここで終わっていいレベルで感動的。

この時点で私の評価は90/100点。

ところが監督は、カンヌ風にそこでうやむやに終わらせてしまうことなく、最後の最後に真相はどうだったのか、きちんと用意してみせる。

もう、気持ち的には着地点を見た後のような気分だったので、唖然でしたね。

かほどに濃いドラマを構築しておきながらそうひっくり返してしまうのか、と。

なんたる念入りなお膳立てで、重厚な引きか、とほとほと感心。

ただ、終盤までのドラマに心酔してしまった人にとってはこのオチは蛇足、と映る危険性もなきにしもあらず。

そこは難しいところでしょうね。

私は監督の演出力の高さ、シナリオ作りの見事さを評価したいところですね。

普通、こんなシンプルなネタでここまでの物語を編み上げられないですよ。

ジェフ・ニコルズ恐るべし、その一言ですね。





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