アメリカ 2016
監督 アレックス・プロヤス
脚本 マット・サザマ、バーク・シャープレス


さて、ラジー賞にノミネートされたとか、古代エジブトを史実無視で滅茶苦茶に描いてるだとか、エジプトの話なのに白人ばっかり出てて人種差別だとか、本国では酷評の嵐だった本作ですが、え?そこまで酷いかこれ?というのが正直な感想。

そもそもね、私に言わせりゃ、このたぐいのアクション・ファンタジーに史実云々を強要するほうがどうかしてる、って話で。

神と人間が同じ地上世界で同居してる、という設定なんですよ、この物語。

そんな架空の神話世界に中途半端な史実を持ち込もうとする方がおかしい。

なぜ、エジプト古代文明を素材としたおとぎ話じゃいかんのか、と。

文句つけてる連中はSF/ファンタジーをこれまで見たことないのか、と真剣にその神経を疑いますね。

これがダメなら歴史改変ものとか、架空戦史ものとか全部アウトですよ。

ま、批判にもなってない放言ですよね。

人種差別うんぬんにしてもそう。

確かにハリウッドは黒人奴隷を良しとしていた歴史的事実にずっと目をそむけてきましたし、アカデミー賞が白人に独占されている、というのも事実でしょう。

でもそれが「エジプト」映画に「黒人」が居ないことと同義ではないですよね。

黒人が映画に出ていれば平等なのではなくて、黒人が出ていようが出ていまいがそれを誰もが格別意識しない状況が平等なんだ、と私は思うんです。

論点はそこじゃないだろうと。

それに映画のリアリズムをどう構築するか、という観点から問題を照らすなら、そもそもがですね、エジプトの映画なのに役者が英語喋ってる時点でもうすでにおかしいわけですよ。

そこはいいのか、と。

そこをすっ飛ばして人種の問題だけ槍玉に挙げられても、それってもう映画批評とは無関係なところでの議論ですよね。

なんか作為を感じますね、私は。

都合よく批判できそうな映画が発表されたから、ここぞとばかり便乗して運動のネタにした黒幕がいるような気がしてしかたがない。

私はどちらも的はずれな指摘だと思うんで、無視していい、と考えてます。

で、それら雑音を排して改めて作品そのものと向き合うならですね、美術や衣装に関しては相当がんばってる、と思うんですよ、この映画。

そりゃエジプトじゃないかもしれません。

けれど架空の別世界を構築することが前提にあるのだとしたら、その世界観を揺るがぬものにしようとするデティールへのこだわりは、この手のヒロイック・ファンタジーにおいて充分すぎるほどの完成度だと私は思うんですね。

なんかもう圧倒される、というか。

見たことのないものを見せようとする気概を感じるというか。

神が変身ヒーローばりに硬質な擬獣化するのもかなり中2魂をくすぐられましたね。

うぉっ、テカテカのガッチャマン、いやこれはベルセルクの狂戦士の甲冑といったほうが適切か!などと私は一人で騒いでたりもした、お恥ずかしい。

最近流行りのスロー&ファストを断続的に繰り返す、重力無視のアクションも見応え充分。

死後の世界と地続きである、という世界観も、日本神話における黄泉平坂の逸話を思い出したりもして興味深かった。

いやいや、悪くないじゃねえかよ、と。

ラジー賞ってのはあまりに気の毒すぎるんじゃないか、と。

ま、唯一難点をあげるとしたらシナリオですかね。

悪くないと言いつつも、1ヶ月で忘れる自信が私にはある。

目の前を巨大なダンプカーが猛スピード、スレスレで通り過ぎっていったような感触を受ける作品ですが、ダンプカーのあまりの派手さに思わず二度見してしまう、そんな一作でしたね。

プロヤス監督らしくないし、傑作ってわけでもないとは思いますが、不当に酷評されるような映画じゃない、そんな風に感じました。

私は結構好きですけどね。

テレビでやってたらホルス王子のバトルモードをまた見たい、なんて思ったりもしました。





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