アメリカ 1987
監督 キャスリーン・ビグロー
脚本 キャスリーン・ビグロー、エリック・レッド



ビグロー監督のデビュー作にあたる現代吸血鬼譚。

まあ、バッサリ切り捨ててしまうならB級アクションホラーの一言で終わってしまう作品でしょうね。

吸血鬼が現代社会に紛れ込んでてもおかしくないように、従来のイメージを切り崩し、新たなヴァンパイア像を構築しようとした意気込みは理解できるんですが、まあ、ちょっとやりすぎたかな、と。

吸血鬼たちが人間に紛れて小集団を作り、彼らだけの規律を守って密かに暗躍している、ってところまでは良かったんです。

象徴である「異様に発達した犬歯」を一切映さず、どこから見ても普通の人、としたのも時代を考えれば斬新だったかもしれない。

けどね、やっぱり行動規範がデタラメすぎるんですよね。

いかに超常的な力を持っていようと弱点が多すぎるモンスターである吸血鬼が長い年月を生き延びてこようとするなら、やっぱり目立たぬこと、人間に疑われるようなことは厳禁なんじゃないか、と私は思うんです。

人間が個々では非力だとしても、数で攻めてこられたらどうがんばったって太刀打ちできないわけですから。

なによりも必要なのは警戒心であり、食生活における細心の注意なのではないか、と。

なのに吸血鬼ども、いきなり無計画にバーを襲って酔客皆殺しの吸血パーティーとか平気でやらかすんですよね。

モーテルに立てこもって警察と銃撃戦したりもするし。

そんなことやってちゃあ、とてもじゃないですが何百年も人知れず過ごす、なんてこと出来うるはずもない。

警察組織もバカじゃないんだから。

つまり、ストーリーの組み立てそのものが物語の最初の設定を矛盾あるものにしちゃってるんです。

派手にやりたかったのはわかるんですけどね、それが杜撰であることに直結してちゃあまずいだろうと。

感染のルール作りも曖昧。

主人公はたったあれだけのことで吸血鬼になっちゃったのに、直接経口吸血された犠牲者達がその後吸血鬼になった、って描写が一切ないんです。

血を吸われてそれでおしまい。

なんで主人公だけ特別なんだよ、っていう。

エンディング近くで描かれてる、吸血鬼から人間に戻る方法もあまりの適当さに唖然。

そんなとっさの思いつきみたいな素人療法でなんとかなるならそもそも集団化したりせんわ、って話であって。

自分で練り上げたドラマを全部自分の手で壊していくんですよね、この映画。

バイオレンスあり、ラブロマンスありのエンターティメントにしたかったのは充分わかるんですが、あまりに隙だらけ。

唯一評価できるのは、女性監督とは思えぬ骨太な演出が性差を感じさせないことと、小さなエピソードの筋立てに光るものがある、と感じられたことぐらいですかね。

子供の吸血鬼の執着をちょろっと物語に織り込んだのは素直に良い、と思いましたね。

近年のビグロー監督の活躍からは想像もできない一作でした。

才能の片鱗は見いだせなくはないが、まだまだ開花には程遠い、って感じですかね。





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