アメリカ 2001
監督、脚本 リチャード・ケリー



航空機のエンジンが自宅に落下してくるのを免れ、九死に一生を得た少年の、現実とも妄想とも言い切れぬ奇妙なその後の28日間を描いた作品。

もう先に言ってしまいますけど、最後にとんでもないオチが待ってます。

これ、かなり衝撃的です。

種明かしのレベルは名だたるSF系の名作に比肩するクラス。

しかもこれが切ない。

胸がしめつけられる、というか、強く情動をゆさぶられる、というか。

そんな選択をさせるための「謎のカウントダウン」だったのかよ、と私なんざやるせない思いで心は千々に乱れっぱなし。

で、この映画が普通じゃないのは、ラストシーンを見た瞬間から「28日間の物語」に次から次へと疑問が湧いてくることでしょうね。

リバースムービーとはほんとよく言った。

え、あれはどういうことだったの?あのシーンの意味は?あのセリフの意味は?と、頭の中はもう大混乱状態。

オチに至るまではそれほど起伏に飛んだ魅力的なストーリーってわけじゃないから、というのも混乱に拍車をかける大きな要因かもしれません。

全編において、カウンセラーに通う問題児気味な主人公少年の学園生活が、幾分妄想気味に描写されてるせいもあってか「つかみどころがない」というのが正直なところ。

普通に恋したり、小さな揉め事があったり、大胆ないたずらをしたりと、いかにもな青春グラフィティではあるんですが、どこまでが現実でどこまでが主人公の内的世界なのか、区別がつかないんでのめり込めない、ってのは少なからずあった。

クライマックスにさしかかるまで、ちょっと退屈に感じられた部分もちらほら。

そこはやっぱり演出力不足であったり、ドラマ作りがあまり達者じゃなかった、と言えるように思うんです。

なので細部をしっかり記憶してない。

なんとなく流して見てしまったところもあるんで、余計に慌ててしまう、という仕組み。

ただ、それもラストシーンが示唆するものを検証するために再度見直すことで、すべての不可解な断片が全部意味を持ってつながってくることは確か。

その緻密さ、精巧さは目をみはるものがある、と言えるでしょうね。

つまり、いかに破綻のない完璧な図面をひくか、ということが優先されているため、物語の途中経過が平面的になってるのは否めない、というのが現状なのではないか、と私は思うんです。

劇場公開時はあまり話題にならず、メディア化されてから人気を博した、というのもそのあたりが原因でしょうね。

さらに、この作品をきちんと理解するためには「なにかの不作為な力によって、本来なら途切れていたはずのものがタイムループを生ずるに至った」という前提をオチから読み取ってないとおそらく埒があかない。

SF脳が必要とされるのは間違いない。

その上で、彼の28日間とはなんだったのかを考えていかないと、おそらく納得のいく答えは導き出せない。

私の解釈では、この作品が描きたかったことって、体験するはずのないことを強制的に体験させられてしまった少年の寄る辺なき哀しみ、だったと思うんですね。

まあ、決して隙なしの高い水準にある作品、というわけではないと思います。

けれど、奇抜な着想と、物語をこういう形に組み立てた監督の力量はやっぱり非凡だと私は思うんですね。

どちらかといえば難解かと思うんで、広くおすすめは躊躇するものもあるんですが、SFの可能性を追求している作品として記憶しておきたい、そんな風に思いました。

あと、矛盾がある、と指摘してる人が結構いらっしゃいますが、私の見立てでは矛盾はありません。

すべて説明がつく。

ハイティーンなジェイク・ギレンホールを見れる、ってのも今の活躍を知る人にとっては魅力のひとつかも。

思考実験を試される一作。

はまる人は滅茶苦茶はまるかもしれませんね。

カルト的人気も納得ではありました。





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