香港/中国 2015
監督 ソイ・チェン
脚本 ジル・レオン



ドラゴン×マッハ!などという訳のわからん邦題になってますが、実はこの作品ドニー・イェンとサモハン・キンポーの激突で話題になったSPL/狼よ静かに死ねの10年ぶりとなる続編。

ただしキャステイングされている役者で前作から引き続き登場しているのは刑事役のサイモン・ヤムだけ。

ストーリーも前作の後日譚、というわけではなく、テーマを同じくする全く別の話である、と監督は述べていて、実質なにがどう続編なのかよくわからなかったりはします。

ま、連作長編みたいな捉え方でいいのかもしれませんけど。

例によって香港映画ですんで、シナリオにさして特筆する点はありません。

今時、臓器密売組織に潜入捜査官に白血病の少女、って、何十年前のネタなんだよ、って話であって。

題材の古めかしさを現代風に見せようとする工夫も見当たりませんでしたしね。

ただ、そんな手垢感満載のシナリオを、非常に丁寧に描写、構築していこうとする細やかな心配りが監督にあったのは確か。

なので既視感たっぷりでもなんか見れてしまうんですよね。

観客の予測を裏切る顛末、ストーリー展開の引きのうまさなんかもあって、ふと気づけば「せめて少女だけはなんとか助けてあげて!」とやきもきしてる自分がいつのまにか居たりもして。

素直に香港映画もレベルアップしてきたなあ、と感心。

アクションだけじゃなく、きちんと物語でも魅せようとする志が伺える。

正直なところ、終盤の潜入捜査官と少女のスマホ越しの会話にはちょっと涙腺にくるものがありました。

こんなベタなドラマで泣いてなるものか、と歯を食いしばりましたけどね。

いや、素直に泣けよ、俺。

物語の進行上、必要ないと思われるアクションシーンを無理矢理挿入しようとしないのにも感心。

ウー・ジンとトニー・ジャーという2枚看板を配しておきながら、その2人が本気で戦い出すのって、ほんと最後の最後なんですよ。

溜めて溜めて溜めて溜めて最後に爆発、とでもいいますか。

なにかというとサービス精神たっぷりにしょっちゅうドタバタやらかす香港映画にしちゃあ、これはなかなか勇気ある構成だったと思いますね。

アクション映画だって物語なんだ、と主張する監督の気骨が透けて見えるようでした。

で、肝心の格闘シーンなんですが、これね、もう本当に凄かった。

香港電影金像奨 最優秀撮影賞を受賞したのも納得のすばらしさ。

刑務所での暴動シーンを長回しワンカットで撮ってるのにも舌を巻きましたが、圧巻なのはトニー・ジャー、ウー・ジン、マックス・チャンが三つ巴えで絡む終盤のシーンでしょうね。

動きの連続性が途切れない香港お得意の撮影方法もさることながら、組手の細部に対するこだわりがもう半端じゃない。

いったい何十回リハーサルを重ねたらこんな動きが撮れるんだ、と目が点になる場面の目白押し。

しかもトニーはトニーでムエタイの動きを、ウー・ジンはウー・ジンで香港伝統のカンフースタイルを崩さずマックス・チャンとやりあうものだから、ほとんど異種格闘技戦状態になってるんですよね。

キレといい、スピードといい、カメラワークの見事さといい、もう鳥肌が立ちっぱなし。

地球から重力は消失したのかよ、って。

なんでこんなことをワイヤーなしでできるんだよ、って。

断言しますがこの格闘シーン、近年最高峰のレベルにあると言っていいと思います。

私が大好きなドニー・イェンですらここまでのものが撮れるだろうか、と思えてくるぐらい。

もう、このシーンが見れただけで私は全部許せましたね。

役者の高い技術と、何一つ見逃すまいとするカメラマンの執念、アクション監督の思い描く絵図が三位一体となった必見の名シーンといって過言じゃない。

ま、あえて重箱の隅をつつくなら、なんで刑務所長があそこまで無敵な格闘技の達人なんだよ、とつっこめてしまったり、意味不明のファンタジックなシーンがラストにあって理解不能だったりと、やや隙はあるんですけどね、もういい。

ここまでやってくれたら文句ない。

香港アクション映画ファン、必見の一作だと思います。

とりあえずマックス・チャンはこれからガンガンくる役者だ、間違いなく。

えーと、トニー・ジャーはちょっと痩せたほうがいい。





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