アメリカ 2016
監督 グレッグ・モットーラ
脚本 マイケル・ルシュール



隣に越してきた美男美女カップルが実はなにやら怪しげな諜報活動に手を染めるスパイだった、というプロット自体はさほど意外性のあるものでもない、と思うんです。

主人公夫妻がなしくずし的に巻き添えになってとんでもない目にあわされる、というのも、まあ、コメディじゃ王道のパターンですよね。

そんなに面白くなりそうな雰囲気はあんまりないなあ、というのが正直な序盤の印象。

きっと、そこそこ笑えはするものの、無難に棘のないオチが待ち受けてるんだろうと。

そんなにハードル上げずに見るのが得策と、私は寝っ転がってぼーっと物語の推移を追ってたりもしたわけです。

早い話が舐めきってたんですね。

寝オチせずに最後まで見れたら僥倖、みたいな。

ところが、です。

そんな不真面目な態度でダラダラ視聴にのぞんでた私を叩き起こしたのが、55分をちょっと過ぎた頃ぐらいのワンシーン。

いきなり狙撃されたかと思えば、そこから怒涛のアクションに継ぐアクション。

ホームドラマにいきなりワイルド・スピードが地響き立てて乗り込んできたような展開に唖然、呆然。

しかもこれ、結構本気でどう見せたらかっこよく映るか、をじっくり考えた動きと構図だったりする。

もう、一気に目が覚めるとはこのこと。

ギャップが凄いんですよね。

さっきまでお笑いだったのに、なんだこのマジなシークエンスは、ってなもの。

そこからの筋運びはまさに一気呵成。

コメディのスタンスを崩すことなく、緊張感を失わない丁々発止なシナリオの流れは見事だったと思います。

私が特に感心したのは、前半でのエピソードをいかした見せ場がきちんと後半で結実してること。

スパイである2人とごく普通の夫婦である2人の奇妙なケミストリーを浮き彫りにする演出がそこにはあったりするんです。

ドラマをないがしろにしてないんですね。

それでいて随所に盛り込まれた小ネタが一切スベらない。

ちゃんと笑わせるべきは笑わせる、という周到な計算がある。

このグレッグ・モットーラって監督は良質なコメディってのはどういうものなのか、しっかりわかってる、と思いましたね。

センスがいいし、バランス感覚もいい。

キャラクター造形に長じてるのも美点だと思いましたし。

人事部所属で聞き上手な旦那と詮索好きでお調子乗りな嫁のコンビ、その存在感だけでもう笑えます。

とりあえず最後まで見てください、の一言ですね。

後半の飛ばしっぷりは笑いと痛快さが渾然一体となった、アクション・コメディの教科書のような出来だったと思います。

うーん、序盤、なめててすまん。

暑苦しさを吹っ飛ばすにはもってこいの一作。

ビデオスルーとは思えない良作ですね。





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