アメリカ 1962
監督 J・リー・トンプソン
原作 ジョン・D・マクドナルド



後にマーティン・スコセッシが「ケープ・フィアー」のタイトルでリメイクしたスリラー。

主人公である弁護士の証言のせいで収監された、と逆恨みする男の、弁護士一家に対する報復を描いた作品なんですが、さすがは歲月の風雪に耐えて名が残ってるだけはあって今見ても充分見応えありでしたね。

私が感心したのは題材が全く古びてないこと。

直接手を出すことなく、むしろ法律を逆手にとって、その存在感だけでじわじわと一家を追い詰めていく犯人のいやらしいやり口は、むしろ現代のほうが身近な恐怖として伝わりやすいのでは、と思ったぐらい。

犯人がやってることって、ほとんど今で言うストーカーと同じなんですよね。

先見の明があったのか、嫌な感じに時代が捻じ曲がってしまったのか、どっちなのかわからないんですが、接近禁止令やストーカー規制法が成立したことを鑑みても単に古典と捨て置けないみずみずしさがあったことは確か。

まあ、すごく嫌なみずみずしさではあるんですけど。

ストーリーの組み立てがタイトで変にダラダラしてないのも良かったですね。

あの手この手で犯人を遠ざけようとするも、むしろ敵の小利口さに踊らされて逆に追い詰められていってしまう展開は60年代の映画と思えぬスリルがありました。

そこは主人公を弁護士としたのがうまかった、と思います。

法を熟知した人間で、警察署長ともつながりがあるというのに、たった一人の無法者をどうすることもできない。

弁護士ともあろう人間が最後には捨て身で戦うしかない、と物語を誘導したことが異様な緊迫感を作品にもたらしてるんですよね。

で、それがクライマックスで見事結実。

お互いに裏をかきながら行動する頭脳戦の行き着くはてを、フィアー岬を舞台として演出したセンスに私はやられました。

スコセッシが本作に忠実にリメイクを制作した、というのも納得ですね。

中途半端に改変しようものなら絶対につまらなくなる隙のなさ、きっちり出来上がってる感触がこの映画にはある。

犯人役を演じたロバート・ミッチャムの飄々とした演技も必見。

自然体に見えることが逆にどうしようもなく怖い、ってのは凄いんじゃないかと。

そこはリメイクで犯人役を演じたデ・ニーロと比較してみるのもおもしろいかもしれません。

現在に至るまで似たようなサイコスリラーが大量に発表されてることを考えるなら、その先鞭をつけた作品として抑えておくべき一作ではないでしょうか。

名作の看板に偽りなし。

モノクロなのに目が退屈せず普通におもしろい、ってのが私にとっては新鮮でした。





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