アメリカ 2009
監督 ガイ・リッチー
原案 ライオネル・ウィグラム、マイケル・ロバート・ジョンソン



シャーロッキアンからは総スカンを食らったんじゃないかしら?と思えてくるほどに従来のホームズ像を根こそぎぶっこわした作品だと思います。

頭脳明晰で紳士だが高慢なところもある気どり屋、ってのが私のホームズに対する印象だったんですが、本作におけるホームズ、その社会不適合者的な欠陥人間ぶりからしてどっちかというと金田一耕助に近いんじゃないか?と思えてくるほど。

記憶力の確かさや観察眼の鋭さ、洞察力、推理の鮮やかさなんかは従来のままなんですが、反面、部屋を片付けることができず、1人で放っておくとろくなことをしでかさないあたり、学業一筋で世俗を解せぬどこぞの研究者のよう。

そんな性格破綻者気味なホームズをサポートする存在としてワトソンが側にいるんですね。

単なる探偵と助手、と言う関係性ではなく、奇妙なパートナーシップに結ばれた迷コンビ、という設定は見慣れたバディもののようでなかなかおもしろかったと思います。

ワトソンがいないとせっかくの天才ぶりも存分に発揮できない、というのは二人の関係性を上手に作り込んでるなあ、と。

前半でホームズ、ワトソンにあれこれ事件を手伝ってほしいがあまり、子供じみた嫌がらせで彼の結婚を邪魔しようとするんですけど、そんなホームズのおかしな執着心を見せつけられるだけでなんだか笑えてくる。

一般にはこの作品、武闘派のホームズとしてリブートされた、みたいな言われ方をしてますが、ドイルの原作においてもホームズはバリツという謎の格闘術の使い手として描かれてますから、その点に関しては個人的にあまり違和感を感じませんでしたね。

そりゃ映像化しようと思ったらバリツの使い手である以上、アクションシーンは目玉のひとつとして描写しないわけにいかないだろうと。

結局、鳥打ち帽をかぶってパイプをふかす英国紳士なホームズのイメージに私達は囚われすぎてたのかもなあ、なんて思ったりも。

よく考えたら鳥打ち帽ホームズも、原作ではなく、テレビなり映画なりが作った虚像ですもんね。

また、ルパン三世における峰不二子的な悪女として、ホームズとワトソンの間にアイリーンという小悪魔キャラを割り込ませたのもうまかった。

そのおかげで女嫌いとされていたホームズに、俄然親しみやすさが湧いてくるんですよね。

しかしガイ・リッチーもなんか吹っ切れたような映画作ったな、とつくづく思いました。

これ、質感というか流儀は完全にハリウッドですよ。

アメリカ資本の作品ですからプロデューサーからの口出しも半端なかったのかもしれませんが、こういうのもやろうと思えばできてしまう、というのに私は感心しましたね。

意外と懐の広い監督だったんだ、というか。

それでいて自分らしさもこっそり忍ばせてる。

いわゆるミステリにおける理知的な謎解きの醍醐味は希薄ですが、これはこれで一級品のエンターティメントだと私は思います。

見る前は、どうなることやら・・・と勝手に危ぶんでたロバート・ダウニーjrも思いのほか役柄にはまってる。

熱烈な原作ファンの意見はきっとまた違うんでしょうけど、ホームズというあまりに有名過ぎる名探偵を萎縮せず現代に蘇らせた映像作品としては上出来なんじゃないか、というのが私の結論。





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