ポーランド 2015
監督 アグニェシュカ・スモチンスカ
脚本 ロベルト・ボレスト



物語の下敷きとなっているのはアンデルセン童話の人魚姫でしょうね。

ディズニー映画等でよく知られた人魚姫ではなく、残酷で救いのない原作の方。

そこに猥雑さや下世話さ、少しばかりのエログロを加味してミュージカル仕立てとしたのが本作。

アンデルセン童話と違うのは、人魚は本来人間を捕食するもの、という設定ぐらいでしょうか。

物語の舞台である80年代のワルシャワに見合うよう、あれこれ改変や装飾、お遊びが盛り込まれてはいるものの、主筋は意外にも童話に忠実だったりします。

一時期、日本でも流行しましたが、グリム童話を元ネタとしたホラーとかね、あの手の「現代風リメイク版」と考えた方がしっくりくるかも。

で、こういう作品の場合、原典から大きく逸脱しなければしないほど、どこを楽しむべきなのか、その範疇は狭まってくるわけでして。

いわゆる「盛った部分、余技的な部分」に同調できなければもうアウトだと思うんですね。

それに当たるのが「はからずもクラブで人気者になっちゃった人魚姉妹」という筋立てであり「全編ミュージカル化」だと思うんですが、これねー、好みにもよるんでしょうけど私はあんまり楽しめなかった。

もともとミュージカルが好きじゃない、というのもあるんですが、笑いにもラブロマンスにもホラーにも針がふれてない印象が濃くて。

肝心な場面は全部歌って良しとしちゃう、みたいな。

じっくり撮らなきゃいけない場面は他にあったんじゃないか?と思うんですよね。

せっかく「人間を捕食する」という裏設定があるんだから、なんでそこをもっと活かして血飛沫とばしまくらないの?とか、どうしても考えてしまう。

ゴア度は高くなるかもしれませんよ、でもね、それがあってこそ「種族間の断絶」が描けたはずだし、エンディングにおける人魚の恋心もよりドラマティックに演出できたはずなんです。

ただガチャガチャと騒がしいだけなんですよね。

胴体輪切りで外科的にヒレを足につけ変えたりとか、人魚の下半身がどう見ても鰻とかウツボ系で意味不明に気味悪いとか、なにかやらかしそうな気配だけはあったんですけどね、気配のみで終わっちゃいましたね。

作品の指向性はきらいじゃないんですが、何を見せたかったのか今ひとつピンとこない一作でしたね。

笑わせたいのか、泣かせたいのか、怖がらせたいのか、音楽でご陽気にご機嫌を伺いたいのか、まずは定めてくださいと。

闇鍋的な醍醐味があることは否定しませんが、それを散漫で退屈ととるかは紙一重、といったところでしょうか。

ま、ポーランドからこんな映画が出てきた、ということを驚くべきなのかもしれませんけどね。