ドイツ/オーストリア 2017
監督 ステファン・ルツォヴィツキー
脚本 マーティン・アンブロシュ



自宅アパートで偶然殺人を目撃してしまった女の、犯人から狙われる恐怖を描いたサスペンス。

最初は最近流行りの「リベンジもの」なのかな?と思ったんです。

いわゆるアイ・スピット・オン・ユア・グレイヴみたいな感じの。

ヒロインが「ルールを守れないがためにトレーナーからも疎まれてる凶暴なキックボクサー」である、という設定からして、ああ、もうこれ、完全に前フリだな、と早合点。

さんざんひどい目に合わされた挙げ句、最後は怒りのハイキックと肘で犯人撃退なんですね、わかります、しまった、ハズレくじひいたかも、なんて序盤では思ったりもした。

すまん、全く違った。

いや、大筋では違わないんだけど、プロセスがまるで別物だった。

何が別物かってね、キックボクサーであることが大きな意味を持たないんですね、物語の上で。

むしろ監督は、卓越した体術も神出鬼没な犯人の凶刃の前では無力である、という描き方をしていく。

そこから掘り下げられていくのは、移民であり、頼るものの居ない女の孤独と、なぜキックボクサーとしてルールの範疇で自分を制御できないのか、その理由とおぼしき心の傷。

うわ、これ、割と本格的にドラマじゃねえかよ、と。

「サスペンス」はヒロインそのものをじっくり描写していくための、焚付けの役割を果たしてるんですよね。

単純にカタルシスだけを追求してないんです。

登場人物をどう使って各シーンを組み立てていくか、緻密に計算されてるのも素晴らしい。

用意された駒が足かせとなる形で上手にスリルを演出していくんです。

やがて終盤、誰にも頼らない、頼れない女が、少しづつ偏屈な刑事と心を通わせていく展開も実に面白い。

エンディングなんて予想外の感動が待ち受けててあたしゃ腰を抜かしましたね。

まさかこの手の物語にラブロマンス的な要素を絡めてくるとは・・・とびっくりです。

サスペンスとドラマの両輪ががっちり噛み合った秀作じゃないでしょうか。

国内未公開作品とは思えぬ拾い物だと思います。

単純なアクションものだと勘違いされそうな邦題がほんとにもったいない。

こりゃおすすめですね。