1936 アメリカ
監督・製作・脚本・作曲 チャーリーチャップリン



えー以前別の場所で書きましたけれど、私が映画にどっぷりはまるようになったのはとある友人のせいでして。

それまではほとんど映画って見ることはなかった。

でも全く見てなかったか、というと決してそういうわけではなくて、やっぱり見るつもりもなくなんとなく見てしまった作品、ってのはいくつかあったんですよね。

そのうちのひとつが当時偶然NHKで放映されていたこの「モダンタイムス」。

全然免疫がない頃に見た映画がサイレントだった、いうのは実に皮肉な偶然ではありますが、普通にテレビドラマに親しんでいた身にとってはね、この作品はいろんな意味で衝撃的でした。

映画の歴史を知る、という意味でも今思えば貴重な体験だったような気もします。

やっぱりサイレントのよさってね、「想像の余地」がある部分だと思うんですよ。

もちろん合間、合間に字幕のカットが入ります。

でもそのカットが入るまではね、役者の動きや表情で何を言ってるか、なにを伝えようとしているか、観客は想像するしかないわけです。

そこに観客の数だけの解釈があることがサイレントのもつ豊かさであるように私は思います。

で、あまりに有名な喜劇の帝王チャップリンですが、私がこの作品を初めて見たとき、実はその名前すら知らなかった。

なんか変な格好したちょび髭のオッサンだなあ、と。

本当に失礼きわまりないんですけど。

でもこれが不思議なものでね、5分10分と経過するうちにね、その様相がだんだん愛らしく見えてくるんです。

やってることは肉体派ドタバタコントそのものなのに、やたら笑えてしかたがない。

滑稽さが板についているというかね。 またお笑いだけじゃなくて、ちゃんとテーマがあって、心優しいドラマがある、というのがチャップリン作品の素晴らしい部分でしょうね。

ラストシーン、私テレビの前で号泣してました。

もうあまりにつつましやかに美しくてね。

その後、友人と出会うまで、チャップリン作品は長らく私のバイブルでした。

一番好きなのはこの「モダンタイムス」なんですけど、「街の灯」「キッド」「サーカス」「黄金狂時代」も捨てがたい。

「独裁者」には魂が震えたし、「ライムライト」はバンドを引退したあともう一度見て、延々30分ぐらい涙が止まりませんでした。

チャップリン作品、って私にとっては原体験であり、ある意味での聖域であったりします。

色々ひねくれた見方ができるようになっちゃった薄汚れた今でもね、彼の作品だけはどうしても軽視する事ができない。

今、ハリウッドの映像技術はもうとんでもないレベルにまで達しちゃってますけど、そういう時代だからこそね、あえてサイレントに触れてみるのもまた逆に新鮮なのでは、と私は思ったりします。

素朴だけれど、シンプルな笑いと、胸を打つ高い美意識がありますよ。





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