the age of plastic 1980 イギリス



やっぱりトレヴァーホーン、というとこのアルバムかな、と。

なんだかんだいっても「ラジオスターの悲劇」は80年代を彩ったエレクトロポップ、ニューウェイブムーブメントの幕開けを飾るエポックメイキングな1曲だと思いますし、なによりポップソングとして非常に良く出来ている、と私は思います。

当時は歌いだしのラジオボイスが、曲名そのままとはいえ、ひどく斬新に感じられたものでした。

もちろん掘り下げるなら、この手の打ち込み系&電子音楽系は70年代初頭のドイツ、クラウトロックにまで遡るのでしょうし、クラフトワークを抜きにしては語れない、とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

国内においては、かのYMOが78年に、先んじてファーストアルバムを発表している、という事実もあります。

ですが、バグルスのエレクトロポップは、そのどのバンドよりもわかりやすく、親しみやすさ、組し易いメッセージ性があった。

プロデューサー、エンジニアとしての才覚が頭ひとつ抜けていた、と言えるかもしれません。

ただですね、私が、本当にトレヴァーホーン、という人物に驚かされたのは、実はこのアルバムなんですね。

YES / drama 1980 イギリス 



失速し始めていたYESが脱退したジョンアンダーソンとリックウェイクマンの代わりに、トレヴァーホーンとジェフダウンズのバグルス組2人を加入させて起死回生を狙ったアルバムですが、これが思いのほか良作。

YESの熱心なファンからは総スカンをくらっているアルバムですが、私が初めてこのアルバムを聴いて思ったのは、「え、YESそのままじゃないか」でした。

多分それなりに変化はあるだろう、と思っていたのに、良くも悪くも大枠でブレることなし。

作曲のクレジットが私の持っている音源では全員になってますんで、どこまでトレヴァーホーンやジェフダウンズが楽曲に関わっているのか不明なんですが、よくぞここまで対応できたもんだな、というのが当時の率直な感想でした。

前々作、前作の「究極」や「トーマト」と比較しても遜色なし。

むしろどこかカラフルな印象すら受ける。

わかりにくさ、とっつきにくさの合間に、こっそり忍ばせたかのようなポップさが好感触。

これがひょっとしてバグルス組がもたらしたもの?などと想像を巡らせたものです。

このアルバムが当時のファンに受け入れられなかった、というのは本当に残念。

プログレというジャンルがそのカテゴリーの名称に反して保守化しつつあった、ということなんだろうなあ、と思ったりもします。

私の中ではこの1作でトレヴァーホーンの評価は急上昇。

バグルスの成功は偶然ではなかった、と確信します。

普通のミュージシャンが、いきなりYESみたいなややこしい音には対応できない、と思うんですよ、私は。

それなりの素養なり、背景なりがないと絶対に無理。

つまりトレヴァーホーンの音、というのはきちんと70年代を踏みしだいた上でのサウンドである、といえるのではないか、と私は思うわけです。

で、その後、さんざんトレヴァーホーンを邪魔者扱いしたファンをあざ笑うかのように83年、再びYESの「90125」にかかわり、シングル「ロンリーハート」をチャートに叩き込む快挙を彼は成し遂げるわけですが、これもうほとんど別のバンドとはいえ、楽曲そのものの出来は意外に良かったのではないか、と私は思っています。



ソリッドな音作りやオーケストラルヒットと呼ばれる効果音が話題になりましたが、それよりも私が感心したのはジョンアンダーソンの乾いた歌声に、ひどく楽曲がマッチしているように感じられたこと。

誤解を恐れずに言うなら、旧来のYESサウンドより、ヴォーカリストの資質を考えた楽曲作りという意味では本作がベストなのではないか、と思ったりもします。

もちろんサウンド的にはプログレはおろかYESでもなんでもない状態だったりするわけではありますが。

ロンリーハートのヒットを皮切りに、トレヴァーホーンはArt of noiseを始動、ZTTレコードを立ち上げ、フランキーゴーズトゥハリウッドやプロパガンダをプロデュース、なんかもう気がついたらあちこちで名前を見る状態がしばらく続くわけですが、このころの音は実はあまり好きではありません。

 Art of noiseのようにポップさを排除しているようにみせかけて実はキャッチーなインストルメンタルエレクトロニカサウンドは83年当時、新鮮味を感じられなかったし、フランキーゴーズトゥハリウッドはリラックス以外にいい曲がなく話題性だけ、プロパガンダもありがちなエレクトロポップで惹かれるものがなかった。

ただ、一時代を築いた、というのは確かだと思います。

時代時代によって、どうしても好みに左右される部分はありますが、ポピュラーミュージックの世界においてはやはり巨人、と言っていいでしょうね。

商売人、と揶揄される事も多々ありますが、商いを始めて販路拡大していくだけの音楽的才能があったことだけは間違いないでしょう。

まあ個人的にはもう一度バグルスを、なんて思ったりもしますが。

数年前、バグルスの3rdを制作する、と発表があったように思うんですが、あれ、どうなったんでしょうねえ・・・。



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