イギリス 2010
監督・脚本 ギャレス・エドワーズ 



予想に反して非常におもしろかった、というのが正直な感想です。

低予算で近未来SF、しかも地球外生命体がうじゃうじゃいるメキシコ、などという設定は処女作にしてあまりにも冒険がすぎるのでは、と思ったりもしたんですが、監督は見事その高いハードルをクリアしましましたね。

ただ突き詰めるならこの作品、SFらしいSFというよりも、どこかロードムービー的な男女の脱出行に主眼がおかれており、そういう意味ではその手のファンの期待を裏切る内容かもしれません。

派手なアクションとかバトルシーンはほとんどありません。

それよりも見知らぬ男と女の、揺れる心模様をどう描くか、という点に監督はこだわったよう。

圧巻なのはラストシーン。

私がこれは凄い、と思ったのは、アンドリューとサマンサの関係性を安易に色恋沙汰に着地させなかった点です。

ラブロマンス、と解釈する方が大勢おられるようですが、私の見立てでは、サマンサのあの行動は、耐え難い日常からの逃避であり、自由への渇望であったように思えて仕方がありません。

別に相手はアンドリューでなくてもよかったんです。

例え命の危険にさらされようと、あの場所に戻るぐらいなら私を連れて逃げて欲しい、と願うギリギリの抵抗。

無理なのはわかっていてもそうせざるをえなかった葛藤が一切のセリフを必要とせずワンシーンに集約。

まさかSFでこのように細やかな心の機微を描いたエンディングに出くわすとは思いもしませんでした。

SFの器に盛られた人間ドラマの秀逸さは、非日常が舞台ゆえに、日常の澱の底知れぬ闇をなによりも鮮やかに照らし出したように私は思います。

お見事。

いやー傑作でしょう。





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