スペイン 2012
監督 アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本 ランディ・フェルトマン



プロットは非常におもしろかった、と思うんです。

転落事故の結果、頭に鉄の棒が突き刺さったものの、刺さりどころがよかったのかなぜか意識は明晰なまま、ただし、大出血の恐れがあるから現場から動かすことができない、という設定は秀逸だったと思う。

その自分の有様をマスコミを通じてアピールし、現金に換えようとする計略も、死を賭した土壇場の逆転劇、と言った感じで先の展開を充分期待させるものがあった。

ところがですね、本作、これだけ個性的なシチュエーションを思いついておきながらですね、なぜか盛り上がらないんです。

ブラックに笑えるわけでもない、虚虚実実な駆け引きがスリリングなわけでもない、感動的に涙を誘うわけでもない。

なんというか、結局どう見せたいのか、それがよくわからないんですよね。

多分方向性としては家族愛みたいなものを描きたかったんだ、と思うんです。

例え札束を詰まれようがパパの命には代えられない、みたいな。

ただそこに徹底してリアリティがない。

子供の学費にも困るような無職の夫が最後に仕掛けた逆転の手段をですね、なぜ妻は否定するのか、なぜ息子は何も言わないのか、金をもらったところで夫が死ぬわけでもないのに、なぜ交渉を毛嫌いして少女の脳内お花畑みたいな思い出のテープを大事にしようとするのか、すべてに現実味がないんですよね。

私が思ったのは、これじゃあ、パパの決死な賭けもすべて無駄じゃないか、でした。

愚かな家族を持つと夫の死にもの狂いの努力も無駄になる、が描きたかったわけではないでしょうに、と思うわけです。

監督の意図しないところで誰かの横槍が入ったのかもしれませんが、失敗作でしょうね。

なんだかもうしらじらしい、とすら思ってしまいました。

うーん、私は残念ながらダメですね、この作品。





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