カナダ 1982
監督、脚本 デヴィッド・クローネンバーグ



クローネンバーグの名を世界に知らしめた1作。

なんと言っても偶然受信したスナッフビデオが見たものを汚染し、ドラッグのように精神を蝕んでいく、というアイディアに恐ろしく先見性があったように思います。

デティールは違えど、これを呪いと置き換えるなら、まさに「リング」そのものなわけですし。

連鎖、感染する狂気を描いた作品の先駆けとして評価することもあながち間違ってはいないのでは、と私は感じました。

さらに秀逸だったのは、ネットの存在しない時代に、氾濫する映像情報に蝕まれる危険性を予見していたことでしょうね。

ビデオドロームによって脳に腫瘍ができる云々のくだりは胡散臭すぎて余計だったか、と思わなくもないですが、畳み掛けるように重層的な幻覚シーンの演出は、お得意の肉の変容も生々しく、独特の薄気味悪さ、インパクトがあったように思います。

シナリオが緻密さに欠ける、 整合性がない、などの指摘もありますが、意図的に観客を混乱に陥れるようなキーワードの数々といい、シンボリックな銃の造形や主人公の腹部の亀裂が象徴するカリカチュアライズされたエロスといい、混沌と意味不明でもそれはそれで別にかまわないのでは、と思える蠱惑的な酩酊感があるように私は思いました。

見る人を選ぶ作品かもしれませんが、ホラーやSFを追う上で無視できない映画だと思います。

精神と肉体の変質を描き続けてきたクローネンバーグの、初期の集大成、と呼んでもいい作品ではないでしょうか。





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