1977年初出 松本零士
少年画報社ヒットコミックス 全18巻



重箱の隅をつつくなら、色々気になる部分はあるんです。

相変わらず回収されてない伏線や謎はありますし、なにかと思わせぶりなメーテルの言動がイライラするというのもありますし、結局のところ宮沢賢治は無視しちゃっていいのか、と思ったりもしますし、蒸気機関車が宇宙を飛んで星を巡るって、真面目にSFするなら、あまりに冒険が過ぎる設定だろう、と思ったりもするんです。

でもですね、それらすべてを併せ呑んだ上で、なおかつこのシリーズには壮大なロマンがあった、と私は思うわけです。

こんなこと私は滅多に書かないんですが、見果てぬ宇宙を想像する「夢」がこの作品にはあった。

停車駅である星々の成り立ちや文化、その描写が荒唐無稽すぎる、という批判もあるでしょう。

ですが少なくとも子供の頃の私は、本作を読んで「なんて宇宙は広大で多様なんだろう」と目をキラキラさせてました。

それは大人になってから再読しても大きく変わることはありません。

むしろ、よくぞまあ18巻分も毎回毎回アイディアが続いたものだ、と感心することしきり。

特筆すべきは、松本流スペースファンタジーを、その世界観まるごと形にしたことに他ならないように私は思います。

デティールじゃないんです。

他のどの漫画家が描く宇宙とも違う、松本零士だけの宇宙がここにはあった。

そんなことをやらかした漫画家は歴史を紐解いてもそうそう居るもんじゃありません。

永遠の命とはなにか、というテーマを、鉄郎が旅に身をさらす日々に波紋として投げかけたのも見事だったと思います。

SFロードムービーなんですよね、実は999って。

だからこそいつか訪れる旅の終焉を想像してひどく心をかきみだされてしまう。

この時点での、著者の集大成、といっていい一作でしょうね。

当時のブームを経験していないゲーム世代の若い人があらためて読んでどう感じるものか、さっぱり見当はつきませんが、やはり著者の玄関口はこの作品だと思います。

思い入れもあるのかもしれませんが、代表作であり、他に類似作のみあたらない傑作だと私は思います。




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