カナダ 1983
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
原作 スティーブン・キング



やたら薄気味悪かったり、偏執的だったりするホラーが得意な監督だと思っていたらなんだこれは、と当時ひどく心揺さぶられた一作がこのデッドゾーン。

交通事故が原因の5年に及ぶ昏睡から目覚めた主人公が、後遺症と引き換えになぜか千里眼の能力を得てしまう、というSFなんですが、これがもう半端じゃなくおもしろいんです。

描かれているのは不意のアクシデントによってすべてを失ってしまった男の孤独です。

病院のベッドで眠り続けている間に、職を失い、恋人を失い、あげくに杖なしでは上手に歩けぬ状態に主人公は陥ります。

まるで、その不遇な運命の代償としてあてがわれでもしたかのような不思議な能力。

ですがその能力は全く自分を救いません。

狂騒的なマスコミから逃れるように、ひとり自宅に閉じこもる主人公。

はからずも知ってしまった不幸な未来を改変するために、やむなく行動しても誰の感謝を得る訳でもなく、 結末は常に主人公を傷つけ続けます。

それでも知ってしまったことを、無視できず、最後に男はある決断をするんですが、これがもうね、号泣です。

誰の理解も得られないことは承知の上で凶行としか思えぬ行動に出るラストシーン、私はまぶたに押し当てたハンカチを少なくとも3回は絞りました。

一切の救いはありません。

ですが、異形の孤独、悲しみを、それでも多くの人たちのささやかな日常のために、かつての恋人のために、滅私を貫こうとするする美しさを、 ここまで鮮烈に描いた作品を私は他に知りません。

クリストファーウォーケンの演技がまたもう、素晴らしいんです。

どこか病的な狂気をちらつかせながら、秘められた心優しき繊細さをいかんなく表現。

大ファンになりましたね。

キングの原作がある、という事がクローネンバーグの方向性を狂わせたのかもしれませんし、特異な化学反応を起こしたのかもしれません。

監督にしてはらしくない作品かもしれませんが、SF映画史に名を残す傑作に仕上がっていることは間違いありません。

必見ですね。

棺桶に入るまでに必ず見ておくべき一作。





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