1972年初出 藤子不二雄A
秋田書店チャンピオンコミックス 全13巻



藤本弘という天才の強烈な光の影で、隠花のように怪しく咲いたのが我孫子素雄だったんだろうなあ、と思ったりもしました。

まーしかし凄い少年漫画です。

屈折もここまでくるとむしろエンターティメントになるのか、と感心したり。

とりあえず魔太郎、お前絶対誘ってるだろう、と。

どう見ても「さあ、いじめてください」と自分から振ってるようにしか思えません。

少しでも現状をなんとかしたい、と思うのならですね、もうちょっと建設的に自己改革に取り組むのが普通だと思うんです。

でも魔太郎は違う。

わざわざ絡まれそうな人の前でズボンにジュースをこぼしに行ったりするんです。

当然ぶん殴られますわな。

そしてうらみ念法炸裂。

チンピラ撲殺袋詰めにしてゴミの日に出したりしちゃうんだから、仕返しするにしてもお前、やりすぎだろう、と。

つまりこの作品、いじめられっ子の超常能力による復讐を描いたようにみせかけて、実は魔太郎というゆがんだサディストの容赦のない暴力的快楽を描いている、という見方もできるわけです。

いやもうこんなの藤子Aにしか描けないと思う。

黒魔術を駆使し、サタンを信奉する反社会的存在が、弱いものたちの代弁者にすりかわる巧妙さは、なんだかどこぞの国のセクトのようだ、と思ったりもしました。

後半、出生の秘密が明らかになり、急に壮大なダークファンタジー調の内容になるんですが、もう全然魔太郎に共感できなくて。

これまであまたの加害者を手にかけておきながら、自分の家族だけは大事って、そりゃ身勝手すぎるだろう、と。

メジャーな少年誌に掲載された中では屈指の怪作だと思います。

通読してると時折笑いがもれてきそうにすらなる私は、実はこの狂った怪奇ファンタジーにどっぷりはまっちゃってるのかもしれません。




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