1978年初出 藤子不二雄A
中央公論新社 上、下巻



柏原兵三の「長い道」を底本として漫画化された一作。

戦時中、富山に避難した少年の慣れない疎開体験を描いた作品なんですが、これが本当に藤子Aなのか?と幾分疑問に思うぐらい著者の普段の作風とは肌合いの違う内容でびっくり。

あいかわらずいじめがテーマになってはいるんですが、それをうらみ念法で解決したり、なんてことはなく、異分子がどうやって周りと協調をはかっていくのか、をドラマ性重視で丁寧に描いているんですね。

子供同士とはいえ、いや、むしろ子供同士だからこそ、派閥もあって、争いもあり、未熟であるからこそ感情の行き違いが深刻になりがちなのだ、と本作は饒舌に語りかけます。

またそれを細やかに、感情表現豊かに描けたからこそ、古臭さを感じさせず、支持を得ることができたのだろう、とも思います。

印象的なのは番長格のタケシと主人公のほのかな友情のあり方。

好意を上手に表現できないタケシの葛藤は、ああこれは少年に限らず広く大人にも共通するもどかしさだ、と思いましたね。

エンディングは涙腺にきます。

帰る場所のある主人公とこれからもここで生きていかなくてならないタケシ。

そのコントラストが流れ行く風景を背景に、まるで映画のよう。

藤子Aの固い描画も不思議に物語にマッチ。

著者最高傑作ではないでしょうか。




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