イギリス/アメリカ 2013
監督 スティーブン・ナイト
脚本 スティーブン・ナイト



走行する車中での、多人数との電話のやりとりだけをトム・ハーディが一人芝居で演じた密室劇。

結論から言うと予想外におもしろかった、というのは確かです。

たった一度の過ちから妊娠してしまった浮気相手のもとに駆けつけるため、1人ハンドルを握る主人公の姿から物語は幕を開けます。

寝耳に水の早産。

実はその日は子供達とサッカー観戦に出かける予定。

翌日にはヨーロッパ最大規模の工事が現場監督としての彼を待っている。

誰も浮気相手のことは知らない。

知らぬ存ぜぬを貫くことも出来るのに、彼は仕事なげうって、家族に懺悔して、浮気相手の下へと向かいます。

愛情があるわけではない。

だが見知らぬふりはどうしてもできない。

主人公の人生を形作ってきたものが、ただ偶然の巡りあわせによって、電話の通話だけで次々と破綻していくんですね。

先の展開の読めぬ異様な緊張感は画面から目を離すことを許しません。

さすがシナリオライター出身なだけあってスティーブ・ナイトの脚本、よくできてます。

抑揚の効いたトム・ハーディの演技がまた素晴らしい。

1人車を運転する一家の主の苦悶が、エキセントリックになりすぎないよう極力抑えて演じられているというか。

このシーンでこんな表情を見せるのか、と驚かされること数度。

とてもマッドマックスと同一人物だとは思えません。

エンディングもよくぞここに着地した、と感心。

どう考えても救いがないぞ、どうする気だ、と思っていただけに、そうくるか、と唸らされました。

無数のドラマがあるんだ、とでもいいたげなラストシーンも実に印象的。

ただ、絵的にはですね、もう少し工夫が欲しかったかな、と思ったりもしました。

夜のハイウェイ、という事もあって、どうしても単調になりがちなんですよね。

いっそのこと延々同じ景色を心象風景風にリピートするぐらいの実験的な試みをやっても良かったのでは、と思います。

流れゆく風景に、全く意味がないんですよね。

暗くてよくわからないし、時間の経過がわかるわけでもないですし。

限られた予算をアイディアでカバーした作品としては一級品でしょうね。

これで画作りがうまくなったら手に負えなくなるぞ、とは思いましたね。






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