フランス/ドイツ/ポーランド/イギリス 2002
監督 ロマン・ポランスキー
原作 ウワディスワフ・シュピルマン



実在の人物、ウワディスワフ・シュピルマンの回顧録を元に、ナチス侵攻下のポーランドを奇跡的に生き抜いたピアニストの姿を描いた作品。

いやもう目の醒めるような力作です。

不振が続いた90年代はいったいなんだったんだ、と頭を傾げたくなるような辣腕ぶりです、ポランスキー。

私がこの作品で一番感心したのは、音楽の力で争いを回避して融和をはかろう、みたいな描写がまるでなかったこと。

安易な感動路線を全編通して排除してるんですね。

描かれているのは偶然と運の積み重ねによってかろうじて命を長らえた、ピアノを糧とする等身大の男の姿。

戦下において音楽なんざクソの役にもたたない、と痛感させられるシナリオは、どこまでも現実的で容赦がありません。

いかにして生き延びるか、か細い糸をたぐり、友人の好意にすがり、身を隠し続けるシュピルマンの毎日はひりつくように生と死が隣り合わせで、戦争とはどういうものなのか、それを恐ろしく至近距離で理解させてくれます。

あえて過剰に演出することなく、日常の延長線上に虐殺される人々の風景、累積する屍を添えた画作りも凄まじいの一言。

私のような年配ですらナチスドイツ許せねえ、と今更ながら義憤にかられたりしたのだから、これこそ映画の力でしょう。

欲を言うなら最後にもう少しドラマチックな展開が欲しかったところですが、多分それをやっちゃうと終盤までの積み重ねが全部ダメになっちゃうんでしょうね、きっと。

のめりこむように見ました。

さて、結局ピアノは彼を救ってくれたのかどうか。

奏でられる旋律の美と廃墟のコントラストがすべてを雄弁に語っているような気もしなくはありません。

傑作。






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