1964年初出 白土三平
小学館ゴールデンコミックス 全21巻



江戸時代を舞台に差別とはなにか、生きるとはどういうことかを問うた不朽の歴史大作。

知らない人のために一応書いておきますと、アニメ等で話題になった「カムイ外伝」と内容はまるで違います。

浅い巻で忍者カムイは登場しますが、主人公と言うわけでなく、どちらかというと傍観者であり、狂言回し。

農民である正助を中心とした群像劇、といっていいでしょう。

はっきりいって軽い気持ちで読める漫画じゃありません。

なんせこの作品の為だけに白土三平は赤目プロダクションを設立、雑誌ガロを創刊したほどだからその内容たるや半端なものじゃなし。

私はこの作品で、かつての日本には士農工商以下に位置するエタ、非人という身分制度があったのだ、と知りました。

教科書に載ってないないはずです、これ。

それだけでも衝撃だったんですが、タブーから目をそらさず多面的に描かれた封建社会における人間ドラマの重厚さ、これがまた尋常じゃないんです。

時代劇というよりむしろもう大河文芸作品の域に達している、といっていいんじゃないでしょうか。

読破するのに相当な体力を要することは確か。

エンターティメント性なんてほとんどなく、その陰惨さ、救いのなさに気持ちはとことん沈みます。

でもだからこそ、ここでしか描けなかったものがある、というのは誰もが認めるところでしょう。

漫画史に楔を打ち込んだ大問題作でしょうね。

当時学生だった私の漫画に対する認識を根こそぎひっくりかえしたシリーズ。

ちなみにカムイ伝は3部作をもって完結する、と当初からアナウンスされていて、ここで紹介しているのは第1部にあたります。

現在、第2部までが完結していますが、第3部は発表されていません。

作者の年齢からしてこの未曾有の大作は未完のまま終わりそうな雰囲気。

漫画好きなら一度は目を通しておいた方がいい作品。

論評にマルクス主義だの唯物史観だの飛び出してくるのは後にも先にもこの「カムイ伝」だけだと思います。




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