アメリカ 2006
監督 デヴィッド・フィンチャー
原作 ロバート・グレイスミス



以前見たときは、やたらダラダラと緊張感もなく冗長と思ったんですが、あらためて見直してみて、これのどこが退屈なんだ、とかつての自分を張り倒してやりたくなりましたね。

映画に限らず、どんなメディアでもそうですけど、時間を置いて再度触れてみることが大事だ、とつくづく思った次第。

まるで印象が変わってくる。

まあ確かにですね、前半はちょっとかったるいな、と思える部分はあるんです。

ゾディアックと名乗る劇場型連続殺人鬼はどのように世間を騒がして、どういう形で捜査されたのかを逐一時間軸に沿って追って行くもんですから、どことなくドキュメンタリー風な単調さがあったことは否めない。

いくら現実の事件を題材にしているとはいえ、ここはもうすこし工夫の余地があったのでは、と思います。

ただそれを乗り越えて後半、事件とは無関係な漫画家が、誰もが忘れかけていたゾディアックを単身追いかける展開になってからのおもしろさときたら、これもう半端じゃないです。

何が彼を突き動かしてるのか、本人もよくわかってないんです。

社会正義にかられて、とも言い切れないし、単純に本を書くため、とも言い切れない。

でも漫画家は家族を犠牲にしてまでも真実を追って奔走するんですね。

この「なにかにとりつかれたように事件への追求をやめない男」の描写は凄まじかった、と思います。

フィンチャーはもともとこの手の演出が得意な人ではあったと思うんですけど、さらに腕を上げてきた、と感じました。

「セブン」や「ファイトクラブ」みたいに、みるからに不穏な空気を狂気で彩るのでなく、ふとした日常の隙間に潜む精神の不均衡みたいなものを見事に抽出していた、と思う。

特にポスターの文字を書いた男の家に訪問するシーンや、終盤、容疑者と目線を合わせるシーンは必見。

ジェイク・ギレンホールの演技も素晴らしかった。

エンドロールで、どこまでが創作なの?と不安にさせられたのは久しぶりの体験でしたね。

もう少し短くまとめるべきだった、というのはありますが、だからといって見逃すには惜しい大作だと思います。

70年代のサンフランシスコの風景をフィンチャーの暗い映像美が染め上げているのも興味深かったですね。






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