1988年初出 小池一夫/池上遼一
小学館ビッグコミックス 全6巻



江戸末期を舞台に、新撰組の沖田総司なんかも絡んでユダヤ人と日本人の同祖説をたぐる旅を描いた伝奇ミステリ。

動乱の時代に150年後のハルマゲドンを憂いて行動する馬庭念流の達人たる若き武士と、異国の宣教師、というプロットだけでもとんでもない発想だと思うんですが、そこに半村良ばりの謎解きを散りばめていく、というのが二重に仰天でしたね。

すげえこじつけ、と思える部分もないわけじゃないんです。

でもここまで自信たっぷりに膨大な資料をひも解いたであろう私的考察を披露されると、ケレン味たっぷりと思いながらもどこかひきこまれていく、というのはありましたね。

こういう作品、私は大好きなんですが、残念だったのは物語の舵取りがいささか定まらなかったこと。

伝奇アクションを貫くべきだった、と私は思うんですが、それらしいクライマックスを迎えはするものの、いまいち盛り上がらないんです。

その要因を指摘することは簡単で、強大な敵が存在しなかった、その一言に尽きます。

やはり北の民を敵役にするならするで、その組織やボスの存在まで描ききるべきだった、と思うんですね。

その場その場で雑魚がちょっかい出すだけなんで、苦難の旅もただ無計画なだけとしか映らない。

諸星大二郎風に想像の果てを描写したかったのかもしれませんが、そこはあえて控え目にして闘いと情に焦点を絞るべきだった、と思います。

二兎を追い、いささかストーリーがブレた印象。

宣教師ヘボンがどう見ても男装した女なのにそのことについて最後まで触れられなかったのもよくわからない。

別式女トヨという池上遼一らしいキャラが出色だったんで、惜しい、と思うんですがあと少し届かず、といった感触。

大風呂敷の広げ方が最高に楽しかっただけに、なにかともったいないと感じた一作でしたね。



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