アメリカ 2008
監督 デヴィッド・フィンチャー
脚本 エリック・ロス



アイディアは実におもしろかった、と思うんです。

老人の姿で産まれて、どんどん若返っていく男、という着想は、ちょっと想像をめぐらせただけでもあらゆるドラマが作りだせそうで非常に魅力的な題材だった、と思う。

ところがです。

何を思ったかフィンチャーは、この独特で奇抜な物語を、至極さらりと、淡々と描写するに留めちゃってるんですよね。

辛辣に言うなら主人公の人生を、ただ最初から最後までなぞっただけ。

なんでこのような淡白な作りになっているのか私にはさっぱりわからないんですが、これじゃあ「不思議な人生を送った人もいたもんだね」で、終わりだと思うんです、私は。

私が作り手の意図するところをきちんと読み解けてないのかもしれませんが、それにしたってどうなんだこれ、と脳内は疑問符でいっぱい。

例えば主人公とヒロインの「実年齢」と「見かけ」がちょうど釣り合いかけた時期のシーン。

ここ、ものすごく大事なシーンだと思うんです。

この一瞬の交錯にこそ全精力を傾けて、再び遠ざかっていかざるをえない哀しみと、刹那の美しさを監督は演出してみせるべきだった。

でもなんとなく断続的にすれちがったり、心を通わせあったりで、通り過ぎていってしまうんですよね、フィンチャーは。

エンディングにしたってそう。

子供に戻っていく、のはいいんです。

でもそれは普通に背丈が縮んで子供そのものになってしまうのではなく、見かけは大人なんだけど顔つきや体躯が子供になってしまう、という異形でなくてはならなかった、と私は思うんですね。

それでこそデイジーの愛の深さが伝わるし、肉体の時間が逆行する不可思議な現象の辻褄も合ってくる。 

結局のところ、なぜデイジーとベンジャミンはお互いに惹かれあったのか、また、ベンジャミンは人と違う自分を本当はどう感じていたのか、踏み込めてないし、想像力が及んでいないんです。

このシナリオなら普通、号泣ですよ、私みたいな人間は。

しかし感じたのは長すぎる、ってことぐらい。

感動大作にしてくれ、っていってるわけじゃないんですが、違うなにかを求めたにせよ、もう少しやりようがあったのではないか、と思う次第。

こういうタイプのドラマは不得手なのかもなあ、と感じた一作。

監督が違えば名作中の名作になったかも、なんて思わせないでくれよフィンチャー、と、ファンゆえに残念な限りでしたね。






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