イギリス/アメリカ 1964
監督 スタンリー・キューブリック
原作 ピーター・ジョージ



米ソ冷戦時代を舞台に、終末核戦争の恐怖を描いたブラックコメディ。

名画中の名画、といって間違いないですよね。

軍事計画の盲点をついて、1人の妄想にとりつかれた将軍が戦闘機にソビエト爆撃を指示し、それを誰も止められない、という設定からしてなんと痛烈なアイロニーか、と思いますし、その機に乗じて本格的に戦争をおっぱじめてしまおうとする高官が共産主義を目の敵に蒙昧な熱弁をふるうのも、見事なカリカチュアライズで背筋に寒気が走る。

もうね、どれもこれも本当にありそう、なんです。

徹底したリアリズムを背景に、国家の中枢を担う人間を片っ端からおちょくるものだから、おかしいやら怖いやらで。

このキャラ立ての優秀さは何事か、とすら思う。

核爆弾が投下されるのと同時に、報復として自動的に皆殺し装置が起動する、としたプロットも秀逸だったと思います。

タイムリミットがあるが故、即座の決断が必要であるのに、一向に事態が打開されない焦燥感は陣取り合戦に血眼になる大国のおろかさをこれでもかと浮き彫り。

いかに我々はいつ割れてもおかしくない薄氷の上でささやかな日常に一喜一憂してきたか、そしてそれがどんなにかけがえのないものであるのか、この作品を見ればひしひしと伝わってくることと思います。

よくぞ21世紀を迎えられたものだな、と私はしみじみ思ったりしましたね。

一切の救いのないエンディングも完璧だと思います。

最後の最後まで軍人や高官を愚弄し続ける手厳しさには、キューブリックのただらぬ気骨を感じたりもしましたね。

ヴェラ・リンのWe’ll Meet Againもラストを彩る選曲として素晴らしすぎるチョイス。

私は鳥肌が立ちました。

50年に1本の傑作と言わせて欲しい。

必見です。

ちなみに一人三役をこなしたピーター・セラーズ演じるDrストレンジラブはタイトルに反してほとんど出演がありません。

最後においしいところを全部持っていく感じ。

これもまた見どころのひとつでしょう。





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