アメリカ 2006
監督、脚本 ダーレン・アロノフスキー



病に倒れ、治る見込みのない闘病中の妻を、何とか救おうとする研究者の夫の姿を描いたラブロマンス。

えー、一応便宜的にラブロマンス、とは書きましたが、それを真に受けて見ると手痛いしっぺ返しを食らいそうな気もしなくはありません。

はっきりいってややこしいです。

なにがややこしいか、って、3つのストーリーが同時に進行していく形式であることが、なんですね。

現実世界の物語と、妻の書き綴った中世スペインの物語、心象風景を描写したのではと思われる内的宇宙の物語、 これが入り組んで交錯、さらにはキリスト教的神話世界と仏教的転生観なんぞがとくに整理されることもなく野放図に投げっぱなし。

結論から言っちゃうと、わけがわかりません。

もちろんなにをやりたかったのか、おぼろげに類推することはできなくはありません。

きっと宗教やら医学やら哲学やらまとめて全部ひとつの鍋で煮込んで、死生観みたいなものを描きたかったんでしょう。 

でもこれじゃあ、伝わらないだろうなあ、と思う。

あまりに抽象的、なんですね。

よく言えばアーティスティックなんでしょうが、ぶった切ってしまうなら独りよがり。

あえて多くを語らないことで広く大意が伝わることがあるのを否定はしませんが、宗教的な素材を持ち出してくるならそこはやはり些少なりともロジックを組み立てるべきだった、と私は思います。

でないと表層的なイメージだけを拝借したように見えちゃうんですよね。

いっそのこと完全なファンタジーとして仕上げてしまうのもひとつの手だったのではないか、と思うんですが、実際は現実的であることに未練もあるようで、なんとも定まらぬ仕上がり。

失敗作、と言い切ってしまうには惜しい大作なんですが、多分記憶に残らないだろうなあ、というのが本音。

ただ、なんだかよくわからないなりに胃の腑にずーん、とのしかかってくる鈍い痛みみたいなものはあって、そこはアロノフスキーらしいなあ、と思いました。

なんだか心かき乱す嫌な感じは相変わらず、というのは美点なのかよからぬクセなのか。

万人にはオススメできない一本。




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