アメリカ 2005
監督 クリストファー・ノーラン
原案 デヴィッド・S・ゴイヤー



えー私は格別アメコミに詳しいわけではなくて。

ですんで原作のDCコミックを読んだこともなければ、バットマンがそもそもどういう超人なのかもよくわからない。

それはかつてのティム・バートン版のバットマンを見た後も大きく変わることなく、ああ結局ヒロイックファンタジーなのね、程度の認識しかなかった。

ですんでリブート版である本作にも過大な期待は全くしてなかったんですが、終わってみればいつのまにか居住まいを正している自分がいたりしました。

あえてもう一度バットマンを撮りなおすだけの理由はあったんだなあ、と唸らされたのが正直なところ。

この作品がすごいのは「現実に超人的なヒーローが立脚するというのはどういうことなのか」という部分を徹底的に検証し、デティールや背景、さらには主人公の内面にまで切り込んで構築しなおした点でしょうね。

金持ちが道楽で正義を行使してるだけでは?なんて私は思ってたんですが、そのありがちな先入観を恐るべき丁寧さでひとつひとつ覆していくんですね、ノーランは。

主人公ブルースはなぜ演出過剰ともいえるコスプレまがいでゴッサムシティに降臨したのか、もうここまでこだわりぬいて反証の余地なしに作り込まれちゃあつっこむ隙すらありません。

なんせ復讐と正義の違いから始まって、ファシズムやヒロイズム、自己満足に堕する疑念すらはねのけながら、常に自分に問いかけ続ける姿勢を失わない、ときてるもんだからその倫理観、論理性ときたら見てる側が疲労してくるほど。

凄まじい凝りっぷり、と言っていいでしょうね。

また架空の都市であるはずのゴッサムシティの描き方がうまいんです。

私はこれ、禁酒法時代のアメリカのカリカチュアライズかと思った。

つまり、ファンタジックであるはずの世界そのものが異様な現実感を漂わせているんですね。

実は非現実的であるのはバットマンの小道具ぐらいで、他は全て現代劇にも転用可、というのがあまたの類似作とこの作品の違いでしょうね。

もうなにもかもガチガチに固めすぎちゃって、なんの映画なんだこれは、と途中でわけがわからなくなってくるのが難点といえば難点かもしれませんが、アメコミ映画の歴史に楔を打ち込んだ1本であることは間違いないでしょう。

ただ、日本人の感覚でいうなら、「忍者」はちょっとどうなんだ、というのが唯一の失笑ポイントでしょうか。

まあそれもダークナイトでさらに精度を上げてきて問答無用の境地にいたる訳ですが。

アメコミに興味のない人も見て損はない一作だと思います。






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