1975年初出 白土三平
小学館ビッグコミックス 全18巻



1 サバンナ
2  ナータ
3 ペンテウス
4~8 バッコス
9 野牛の歌
10 ボロロ
11 ワタカ
12 七ツ桶の岩
13 首の男
14 雨女の島
15 お仙
16 泣き原
17 原人の墓
18 鬼泪

カムイ伝と忍者武芸帳で当時の漫画界に一大旋風を巻き起こした作者が挑んだ新シリーズ。

時代劇漫画の白土三平が次に描くのは神話が題材になるらしい、と大きく話題になったようです。

連作短編の形式になっているものもあれば、独立した短編もあり、収録作品に統一性はあまりなかったりするんですが、総じて実験的で、なにかこれまでとは違うことをやろうとしている、というのはひしひしと伝わってきます。

ただ、それが楽しめるのかどうか、というと、かなり際どいラインなのでは、と私は思ったり。

世界各国の神話が題材なので仕方がない事なのかもしれませんが、ほとんどの短編が、わけのわからぬ飛躍をしたかと思えばオチなし、で終わっちゃうんですよね。

特に1巻、2巻あたりなんてその突き放しぶりは凄まじいです。

一切セリフがない。

それでいて内容は誰かの妄想のような幻想奇譚ときた。

よくぞまあこれが商業誌に掲載できたことだと思う。

日本を舞台にした作品は比較的馴染みやすいんですが、これらも日本昔話みたいな筋立てを回避できてなくて、大きく印象に残る、と言うほどのものでもないですし。

唯一の大作、と思えるのが1800年代のアフリカを舞台に、誰からも省みられることのない孤児の生涯を描いた「バッコス」なんですが、タイトルどおり異色作すぎて声を大にしてオススメするのも幾分、躊躇。

なんせ糞尿愛好者でバイセクシャルで利己的な主人公が部族を超えて宗教的カリスマになる話なんです。

気軽な気持ちで読める作品じゃありません。

結局何が描きたかったんだ、と首を傾げてしまう突飛な展開や、無回収な伏線、目を背けたくなるグロさ、陰惨さもバッコスのカルト化を促進。

まあ、アフリカの原野における部族の生活を描いた漫画なんてここ以外にはほぼないでしょうし、そういう意味では斬新、と言えるのかもしれませんが。

全巻通読してみて私が思ったのは、結局これはエンターティメントの否定なのかも、でした。

そこを排斥した上で漫画に何ができるか、を白土三平は模索したのかもしれません。

私が個人的にちょっといいな、と唯一思ったのは「鬼泪」で、この連作短編だけはかつての作風を現代に置き換えたような哀切漂うドラマがありましたね。

どこか映画のようだ、と思ったりも。

なかなか熱心な白土三平ファン以外には受け入れられないシリーズかもしれません。




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