1980年初出 小池一夫/川崎のぼる
集英社ヤングジャンプコミックス 全7巻



数ある小池一夫原作作品の中でもトンデモぶりでは独走状態で怪作、と思われるのが本作。

何が怪作か、ってそのシナリオ展開が、なんですけどね。

描かれているのは裏社会で特Aと呼ばれるスゴ腕の殺し屋。

「俺は家族を養うために殺し屋になった、長男は夢を見てはいけないのだ」などとわけのわからないことを言う人物ではあるんですが、そこはまあ、看過できなくはありません。

殺し屋にまで身を落とさなくとも他にできることはあるだろう、というつっこみを飲み込んで、ああ、極端に走る人なんだなあ、と納得出来なくはない。

問題は第1話~3巻ぐらいまでの展開。

なぜか特Aの殺し屋がオカマの復讐の手助けをするんです。

しかもこのオカマ、望んでオカマになったわけじゃない。

たちの悪いスケバンに恋路の叶わぬ腹いせとして男性器を切り落とされ、やむなくオカマとして生きることにした、という、いわば宦官のような存在。

そのオカマが一方的に殺し屋に恋をするんですね。

最終的にはつきまとうオカマに殺し屋が根負けして、ファミリーに加え、情婦のような存在となることで解決を見るんですが、いや、ちょっと待て、と。

なぜオカマと殺し屋のラブロマンスをオープニングから延々3巻にも渡って読まされねばならんのか、と。

どういう意図があったのか、想像することすらかなわぬ変化球にバットも空を切るしかないわけですが、つまるところ描かれているのは表社会で真っ当に生きられない男と男の同性愛事情としか理解できないわけです。

殺し屋がオカマに篭絡されてしまうシチュエーション萌え、とも解釈できなくはないんですが、あまりにニッチ過ぎてそれがどんな読者層にアピールするものなのか、想像することすら私にはできやしねえ。

昨今の女装ブームとか、男の娘云々とか、性のボーダレスぶりを鑑みるに、おそろしく先端をいってたのかもしれませんが、この作品がとんでもないのは、そういう内容である、と思わせずに劇画ファンをそっちの世界に引きずりこんでしまったことでしょうね。

はっきりいって山川純一どころの話ではありません。

しかもこの作品、それだけアンチなことをやっておきながら、4巻からはそれまでの展開を全てご破算にして巨大殺し屋組織と戦う主人公のストーリーにあっさりシフトチェンジしたりするんです。

もう、わけがわかりません。

川崎のぼるの精緻な作画がカルト化をさらに促進している、と言ってもいいでしょう。

「いなかっぺ大将」の絵でベッドシーンはきつい。

熱心なファンでも小首を傾げざるをえない一作。

小池ファンではない人たちの間でバイブル化してそうな気もします。



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