アメリカ 1984
監督 ジョエル・コーエン
脚本 コーエン兄弟



コーエン兄弟のデビュー作を彼ら自らの手で再編集し、99年に再発売されたもの。

当時劇場公開されたものは見てないんで、何がどう違うのか検証は出来ないんですが、そこはまあ識者の方々にお任せするとして。

私が感心したのは初めて単独で映画製作に望んだとは思えぬこなれた手腕。

ちゃんと見せ場を心得てる、というか。

幾分ね、漫画的だなあ、と思える部分もあるんです。

浮気した嫁と間男を探偵に頼んで殺してしまおうとするくだりとかね。

普通はもうちょっと葛藤なり、駆け引きなり、知恵を絞って色々画策するものだろうと。

でも心理描写のうまさ、キャラクターの立て方のうまさ、印象的な場面作りのうまさがほころびをほころびとして感じさせない。

本当はとても単純な痴情のもつれが発端なのに、それぞれの登場人物がルーズで浅慮であったがゆえ、物事がどんどん複雑に絡み合っていく展開もアイロニックで結末を期待させるものがあった。

で、やはり特筆すべきはもつれあった糸が一応の落とし所を見出すエンディングでしょうね。

なんだこの強引なオチは、と幾分あっけにとられはするんですが、スラッシャームービーかよ、と言いたくなるような狂気漂う演出、壁1枚隔てたギリギリの攻防を描いた顛末は屈指の名場面だったと思います。

アビーの拳銃にはなぜ弾丸が3つだけだったのか等、思索を巡らせてみるのも一興。

実はとても細かいところに監督は謎解きを用意してて、それに気づけば間違いなく、あっ、と言わされるんですが、いやその、そういうところにこだわる前に全体の整合性とか違和感のなさとかそっちを気遣ってくれ、とちょっと思ったり。

それがコーエン兄弟らしさだ、といわれればそれまでなんですが。

ともあれ、非常に水準の高い一作であることは確かでしょうね。





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