メキシコ 1992
監督、脚本 ギレルモ・デル・トロ



16世紀の錬金術師が作ったとされるからくり仕掛けの昆虫型機械クロノスによって、はからずも不老不死を得てしまった老人を描いたデル・トロ監督のデビュー作。

吸血鬼もの、と言われることが多いですが、そう断じてしまうにはどこか違和感を感じる不思議な作品です。

ホラーと言い切ってしまうのも微妙に違う気がする。

多分、監督がフィルムに焼きつけたかったのは、不老不死という異形なんだと思うんですね。

まあ、正直なところ、結局クロノスとはなんだったのか、クロノスによって人は何に変わってしまうのか、そのあたりがすっきりしないまま終わってしまうんで、消化不良気味に感じる部分もありますし、なんとなくバタバタと殴り合いでさして盛りあがらぬまま結んでしまったクライマックスにも若干の不満はあるんですが、人あらざるものに変わっていく老人の姿が妙な緊張感をもたらしていて、どうにも目を離せなかったりするんです、これが。

私はどこかクローネンバーグの80年代の作品に通づるものがある、と思ったりもした。

アートな感覚が後年の作品より強いようにも感じました。

無数の天使像が天井からぶら下げられた富豪の男の寝室のビジュアルを筆頭に、派手な色使いを排したゴシックな画作りに私はある種のセンスオブワンダーを覚えたり。

なんか雰囲気に酔わされちゃうんですね。

ほぼセリフのない孫娘の存在も大きかった。

彼女が終盤、たった一言発する言葉がふいに胸をうちやがったりするんです。

なんとも心憎い、といいますか。

使い方がうまいよ畜生、みたいな。

練りに練られたシナリオがもたらす恍惚とはいささか縁がない作品かもしれませんが、映像で全部見せきろうとする高い志は伝わってきましたね。

少なくともこの世あらざる存在の悲哀は充分表現しきっていたように思います。

黄金蟲の内部映像もデル・トロならではの薄気味悪さで二重丸。

ファンなら見て損はないんじゃないでしょうか。

余談ですが、若き日のロン・パールマンがいかにもな役で出ててニンマリ。





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