イタリア/フランス 1989
監督、脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ



古き良き時代への郷愁を、監督の思い入れたっぷりに、その陽の部分に焦点を当てどこまでも心優しく描き出した傑作でしょうね、やはり。

時代背景として戦争の暗い影なんかもありますから、そんな風にいつも前向きで朗らかにいられたはずがない、現実的じゃない、という人もいるかもしれませんが、やっぱり映画好きとしてはですね、映画が娯楽の王様だった時代の人々の熱狂をここまで熱心に描写されるとですね、なんかじーん、とくるものがあったりするわけです。

名もなき村の人々たちの笑顔が本当に素晴らしくて。

あらためて映画の持つ力に心が揺さぶられるとでもいいますか。

また、監督がすごかったのは、単にノスタルジーに身を任せ懐古主義的に同年代の共感を求めるだけでなく、時代の移り変わりによる栄枯盛衰を、主人公サルヴァトーレの人生と重ね合わせ、ラブロマンスとしても成立させてしまった点でしょうね。

失われていくものの悲哀が、サルヴァトーレがかつて亡くした愛と絡み合うように、彼本人を故郷へと誘う展開は予想どおりではありましたが、どうにもツボ。

特に車の中でエレナと語るシーンなんて、もう必殺の名場面だと思います。

私の年齢がサルヴァトーレにかなり近くなってきたこともあってか、なんかもうわかるすぎるぐらいわかってしまうわけです、二人の気持ちが。

なんでこんなにのめりこんでるんだ、と自分でも不思議。

ラブロマンスは私、鬼門なんで、滅多にないですこんなこと。

アルフレードにああいう役回りを担わせたことも物語に深みを与えていたように思います。

誰かが間違ってたわけじゃない、でも切ない、と感じさせるドラマを作ることって、本当に難しいと思うんですよ。

それを成立させるための全体を俯瞰する視線が絶妙なんですよね。

映画に対する惜しみない愛情を形にするだけでなく、ブレずにきちんと主筋をコントロールできてるからこその賜物とも言えましょう。

心の機微、そのひだを変に煙に巻くような台詞回しで突き放してないのもいい。

ラストシーンが語りかけるように、これは愛の映画だと思います。

真正面からこんなことを書くのは本当に嫌なんですが、そう感じてしまったんだからどうしようもない。

一度は見ておくべきでしょうね。

私のような偏屈ですら優しい気持ちになってしまった、看板に偽りなしの名作。





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