アメリカ 2015
監督 ギレルモ・デル・トロ
脚本 ギレルモ・デル・トロ、マシュー・ロビンス



やっぱりなんと言っても映像美、そこに尽きるでしょうね、この作品の場合。

物語の舞台となったイギリスの古びた屋敷の内観へのこだわりようときたら、幻想絵巻か御伽噺かってな按配でまさにデル・トロの真骨頂。

粘度質な赤い土に沈みつつある、天井の抜けた洋館、それゆえ中央の回廊には常に雪が舞う、って、 もうその舞台設定だけであたしゃ八割方満腹。

色使いの美しさ、装飾品やインテリアの造形美もさすがの一言。

1900年代初頭の物語ながら、この世界のどこにも存在しない過去を見せつけられているような非現実感があるんですね。

トレースした線は正確で忠実なのに、いざ出来上がってみると彼にしか描けないものになってた、とでも言いますか。 

流れ出す血が煙のように宙に消えていくギミックも「デビルズ・バックボーン」以来では、と妙に懐かしかったり。

なんせ前作がパシフィック・リムだったんで、新作は大丈夫なのかとかなり不安だったんですが、これ、デル・トロ健在を見事アピールした、と言っていいと思います。

これだけの画を作り上げることができる監督なんてそうそう居ない、とあたしゃ断言したい。

その分、演出がいささか甘かった、としてもだ。

まあ、シナリオそのものはある種古典的、といってもいいスリラーだったように思います。

前半のアメリカでの展開は正直必要なかったように感じた。

いきなりイギリスで、気がついたらヒロイン四面楚歌、の方がもっと盛り上がった、と思うんですね。

ヒロインを洋館へといざなう姉弟の人物描写も細やかさに欠け、一本調子な仕上がりでしたし。

だから一向に怖くないし、クライマックスもさほどスリリングじゃない。

つーか、足は大丈夫なのか、主人公、体調はどうなったんだ、というつっこみをした人も大勢居たことでしょう。

整合性とか現実味とか考え出すと、色々頭が痛くなってくる部分は確かにある。

でも、いいじゃないか、と。

もうね、この美意識あふるる映像と、ゴシックで頽廃な雰囲気に酔っちゃえばそれでいいじゃないかと。

まだやろうと思えばやれる、ということを世に知らしめてくれただけで私は満足。

決して傑作ではないんでしょうけど、私にとっては強く印象に残る作品でしたね。





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