2009年初出 阿部洋一
講談社マガジンKC 全3巻



オープニング早々、物語の舞台となる町の上空に広大なくもの巣が張られたシーンが出てくるんですが、それを目にしただけでもうあたしゃノックアウト。

作品の世界観を構築するのにあれやこれやと手練手管をつくしてカタカナ造語を並べ、巻末に解説なんかまでつけたりして、昨今の多くのSF/ファンタジーを描く漫画家は本当に苦労していると思うのですが、それらの労苦を阿部洋一はたった1ページで安々とクリアしてしまったといえる。

いや、この「絵」はすごいと思います。

これだけでもう個人的には8割方OK。

で、残りの2割ですが、どこからの引用も模倣も感じさせぬ奇想と語り口でおつりがくるほどなんだから、本当に恐れ入る。

早い話が本作は侵略SFだ。
 
しかしそれが侵略SFにみえず、むしろ伊藤潤二的に何が出てくるのかわからない、しいては、何をやっても良いじゃないか、とだんだん思えてくるのがとんでもないとしかいいようがない。

蛇口で宇宙人退治なんて、普通の発想じゃないですよ。

なんとなく郷田マモラのようなタッチながら、妙なかわいさもあり、それでいてどこか薄暗く禍々しい絵柄も素晴らしいの一言。

どう考えても荒唐無稽なのに、変に雰囲気があり、しっとりと怖い。

多分、どういう方向にもストーリーを持っていけたと思うのだけれど、掲載誌を意識してか、きちんと努力と友情、ラブロマンスを織り交ぜたのもお見事。

「身の丈の正義」の台詞には衝撃を受けました。

理屈じゃなく、尋常な才能ではない、と思います。

これ、人気が伸び悩み、3巻で打ち切られた、というのが本当に信じられない。

後半、ばたばたと話を締めくくってしまったのが残念でなりません。

もう少し巻数を重ねられれば漫画史に残る傑作になったのではと、大げさじゃなく思う。

間違いなく新時代の才能でしょう。

少年漫画ながら、個人的には09年、ベストといっていい傑作。



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