アメリカ 2014
監督 マルジャン・サトラピ
脚本 マイケル・R・ペリー



犬や猫、果ては生首とまで会話する少し変わった男の日常とその転落を描いたコメディ風のスリラー。

まず、大前提として「全く笑えない」というのが私の場合、ありまして。

幻聴が聞こえるという病状、入院歴があって、現在も精神科医にかかっているという状況から察するに、主人公は多分統合失調症のたぐいの精神病患者だと思うんですね。

精神病患者がですね、自分が惨殺した女の首と会話してたところでそりゃそういうこともあるだろう、としか言えないわけで。

むしろ、見ていて痛ましいとしか思えない。

まあ、アメリカのホラーってのはサイコ以降、シリアルキラーは実は心を病んでいた、ってパターンが得意ですから、その文脈にのっとったんでしょうけど、私がひっかかったのはそれをコメディタッチで描写しようとしていたこと。

いやコメディタッチが悪い、と言う話じゃないんです。

コメディにするってことは倫理観にすら抵触する強烈なブラックユーモアになるんだよ、ってことがわかってるのか、と問いたいんであって。

良識ある人々から批難されまくる覚悟がないと、とてもできない毒まみれのカリカチュアにするしかないんだよ、と。

こういうのを中途半端にやっちゃうと単に差別でしかないですから。

徹底して笑いに転化してこそ、その先に見えてくるものもあるはずで。

で、本作の場合、そこがあまりに手ぬるいんです。

どこか人々の神経を逆なでしないようにと見てくれをソフィストケイトした形跡がある。

結果、なにが残ったのか、というと、シリアスにもコミカルにもなりきれない、ただ無難なだけの上滑りな悲喜劇。

ここから何を汲み取れというのか、という。

早い話がアイディアもプロットも安直なんです。

重くなりすぎないように配慮したのかもしれませんが、そんな余計な配慮に気をつかうぐらいなら立ち直れないぐらい徹底したシリアスさで殺人鬼の心の闇を描いた方がずっとマシだった、と私は思う次第。

コメディにしたかったなら、せめて生首でバスケットボールやるぐらいの悪ふざけをぶちかましてくれよ、と。

浅慮である、の一言につきますね。

私は評価できません。





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