スペイン/アルゼンチン 2009
監督 フアン・ホセ・カンパネラ
原作 エドゥアルド・サチェリ



いや、これは凄かった。

一切、文句なし。

食い入るように見た129分、これを傑作といわずしてなにを傑作と呼ぶのか、のレベルにある見事なサスペンスと言っていいと思います。

現在と25年前の過去が同時に進行する凝った構成なんですが、ストーリー自体はそれほど複雑怪奇に本格ミステリというほどでもなく、どちらかといえばシンプル。

で、そのシンプルさを丁寧に肉付けしていくドラマ作りの手腕が本当に素晴らしいんです。

人間関係の描き方とか、キャラ立てのうまさとか、洒脱な台詞回しとか、本筋と関係ないところでぐいぐい引き込まれていくのにまず私は驚かされた。

登場人物の細やかな感情の機微まで観客に伝わってくるサスペンスなんて、なかなか出会えるものじゃありません。

また、ブエノスアイレスの司法に生きる人たちの人間模様を描く事と事件の謎を追う展開、両者の比重が過不足なくイーブンなのにも感心。

なんなんだこのバランス感覚の良さは、と。

なんかもう25年に及ぶ人生のドラマを見せつけられている様な気にすらなってくるんですね。

事件の真相をあぶりだす語り口も素晴らしい。

まあ、考えもしなかった仰天のオチ、というわけではないんです。

でも積み上げられてきた物語に説得力があるから、そのカタルシスや半端じゃなし。

寸分の狂いなく編み上げられた美麗極まる織物の完成品を目にしたかのような鮮烈さがクライマックスにはあります。

さらにはラストシーン、これがまたなんとも小憎らしい。

この内容で嫌な後味を残さぬ配慮まであるって、もはや名匠の域じゃねえかよ、とあたしゃ立ちくらみすらした。

なんと言っても、すべてを解決するには25年の歳月が必要だった、と最後には思えてくるのが一番の凄み、と言えるかも知れません。

Aの打てないタイプライター等、小さな仕掛けが小粋なのもいい。

10年に1本の名作、とオススメする次第。

これは必見でしょう。





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