イスラエル 2014
監督 シャロン・マイモン
脚本 シャロン・マイモン、タル・グラニット



老人ホームに入居する老人が、仲間の願いに答えるべく開発した「安楽死マシーン」を巡って巻き起こる騒動を描いたコメディタッチの人間ドラマ。

もちろんテーマは尊厳死。

なんかもう見る前から気合入れないと作品と対峙できないのでは、と構えてしまいそうですが、これが意外にも気楽に見れたりします。

重くなりすぎないよう、監督はとても気を使ってる、と思いましたね。

随所に仕掛けられた小さな笑いが沈鬱な空気を緩和。

交通警察に切符を切られそうになるシーンや、ゲイのじいさんカップルの片割れがクローゼットに裸で隠れてるシーンなんかは思わず吹き出してしまったりも。

ただ、そんなユーモアの裏側に潜む作り手側の訴えかけは恐ろしく雄弁で、真摯だったりはします。

作品が真正面から疑問を呈しているのは終末医療の問題点であり、ただ生きながらえることを美徳とする道徳観のあり方。 

果てぬ苦しみに身を焼かれながらベッドの上で過ごす最後の数年間と、今、自分の意思で最後の瞬間を選ぶことのできる心の安らぎを天秤にかけるなら、 やみくもな延命が絶対的であるはずもない、と物語は切々と語りかけます。

病院は治療をしない、と言う選択をしない。

行政は自死に手を貸すものを罪に問う。

けれども苦しむ仲間を救ってやりたいから、と明日をも知れぬ老人たちがタイマーをハンダ付けして作ったような粗末な安楽死装置で、悩みに悩んだ挙句、自死幇助に至る決断を下す展開には思わず涙がこぼれました。

なんて世界は老人に残酷なんだろう、とすら思った。

さらに秀逸だったのはエンディング。

これはあなたの周りの人たちの話ではなく、あなた自身がいつかは直面する問題なんです、とラストシーンは暗に含みます。

そしてエンドロールで流れ出す「ベ・エレツ・ラハアダム」。

これがまたもうやたらと胸を打つ。

笑わせられて、考えさせられて、思わず涙がこぼれる名作でしょう。

決して精緻で濃厚な大作と言うわけではなくどちらかというと小品ですが、見て損はなし、いや見ておくべき、とオススメする次第。





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